第8話「天守物語 大詰め」

 白鷺城への攻撃が始まり、応戦する忘れ神達。初めこそ圧倒していた忘れ神達だったが、次第に数で勝る兵に圧倒されていく。あくまで説得を続けようと主張する図書之助だったが……。




天守物語』もいよいよ大詰め。図書之助と富姫の結ばれざる恋の結末が語られる。
 以下感想。



 数で勝る人間に、人間に近づいていく忘れ神達では勝てるはずも無い。またそれはその狡猾さにおいても同様。
 兵は一騎打ちと見せかけて伏兵を用意する。戦場へついて来たお静に至っては、物も言わず後ろから短刀で、嫉妬のあまり富姫を突くと、人間の汚さ、醜さを見せつけます。
 そんな人間ばかりの中、人間として忘れ神である富姫を愛した図書之助は神と人とが同じ場所で戦っていたため境界が薄くなり、忘れ神のような体に変化してしまう。
 しかし彼はそれを「忘れ神ならぬ忘れ人」と受け入れ、その姿のまま富姫側に立って戦う。富姫の力もあり、兵も馬鹿殿も全滅した。だが、白鷺城の忘れ神も富姫を残して全員死んでしまった。白鷺城も破壊され、後に残ったのは図書之助、富姫、そして鷹のみ。
 その鷹=富姫の母の生まれ変わりが、二人の上に花の雨を降らせる。彼の母が人間の男の孤独を慰めるために一輪の花を咲かせたように、二人の孤独を癒していく。
 白鷺城の宝を探していたモノノケ二人が見つけたのは、空を飛ぶ三匹の鷹だった。




 ついに大詰めを迎えた『天守物語』。
 ラストは人間も忘れ神もほとんど全滅し、生き残ったのは図書之助、富姫、鷹のみと言う無残な結果に終わる。ラストで空を飛んでいた三匹の鷹は、やはり図書之助と富姫の二人が富姫の母の魂が生まれ変わったように鷹に変化したものでしょう。
 結局、二つの種族の間で揺れた禁忌の恋は、人間でも忘れ神でもない別の種族に生まれ変わる事で解決を見た、と解釈できます。もう天守閣と言う二人を囲う壁も無い、大空を自由に飛んでいくだけ。二人は空でようやく結ばれた。
 そして、最後までやっぱり生き残ったのはモノノケ二人。人間も忘れ神も皮肉げな視点で観察していた彼らは初めからそれら二つの種族に囚われない存在だったのでしょう。




 図書之助と富姫、二種族間の恋を既存の妖怪ものに囚われない映像で描いた出色の出来栄えでした。次回はいよいよ「化猫」。薬売りの出番ですよ!