『劇場版マクロスF 恋離飛翼〜サヨナラノツバサ〜』

第一感想

 まさにヤックデカルチャー! な映画だった。前回の前編もそうだったけれども、今回はそれ以上の衝撃。
 前回、「もう後半でやる事ないじゃん!」とか思った自分が恥ずかしく思えるくらいの密度の濃いエンターテインメントだった。
 とりあえず、こんなかっこいいアルト、TV本編でも見た事が無い(コラ)。
 以下ネタバレ感想。

禁断のエリクシア

 花嫁シェリルキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
 でもこれライヴー!?
 新郎キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
 って、新郎もシェリルかよッッ!!!
 と、いきなり次回予告を華麗にかわされたシェリルのライヴから劇場版後半はスタート。
 相変わらずパフォーマンス性と隠された意図の深さがあるシェリルのライヴ。
 男性原理/女性原理的なパフォーマンスは変わらないものの、その表現が妙に直接的なのは、シェリルがアルトに恋をしているから。なおかつ、もう命が長くない分、本人も気がつかない所で想いが燃え上がっているから……なのかも知れない。歌詞が恐ろしく直接的なのがその証左に思えるのだが、これは自分の発想が駄目だからだろうか?
 そのライヴの裏で進むバジュラの研究。シェリル自身、フェアリー9として利用される立場であるだけに、意味深かつ、悲壮な画となっている。

「そんな男はおよしなさい」

 アルトの護衛服ゥゥゥゥゥゥッッッ!!! さすがシェリルさん! 銀河の妖精だけあって、ナイスコスセレクト(ヲイィィ)!
 しかしそんなアルトの外見にシェリルもランカも魅了される中、ただ一人騙されない男が一人。それがこの男、ブレラ・スターン!
 アルトの事を、「腕は立つが中途半端」「肝心な所で心が伴わない」と、的確に批評! その上で、ランカに対し「そんな男はおよしなさい」と待ったをかける。おいそこのブレラ、お前、その瞬間だけ限りなく「素」になってるだろ(笑)。

マヤンのランカ

 S.M.Sの慰安旅行に合流したランカ。水着姿で恥じらう姿が、なんだかとっても芸能人。超時空シンデレラとして、劇場版での出世ぶりが分かるような素で女の子はこんな反応をするような。

 しかしおかしい。↑程、無い(最低だ)。

風の導き手

 今回のランカは、非常に巫女性の強いキャラクターとして描かれていたのが印象的。
 全体的に、神話に帰って来たかのような神秘的な映像が続き、その象徴的なものが、風や木々、自然の心を感じさせるランカとアイモだった。

ナナセ登場

 マネージャーとしてナナセが帰って来たー!
 実はノベライズ版では登場しているのだが、後半では登場があって良かった。出番が無いと、一番のランカ好きーとしての立場が無いもんなあ(笑)。

ランカ、ファーストライヴ

 そう言えば、初めてのまともなランカのライヴ。
 シェリルと違って、少女性の強い演出が許されるのは、ランカの特権かも知れない。でも、『虹いろクマクマ』の魔法使いランカの演出は、シェリルの黒うさぎ白うさぎのオマージュが入っているような気がしないでもない。
 今回のライヴで、「キラッ☆」に続く新たなフレーズ「オープン、ランカ!」も登場。 

バジュラの心

 アルト、衝撃の撃墜! とそんな中、傷ついた仲間を助けるバジュラの姿を目撃するアルト。
 バジュラにも心がある……と言っても、TV本編でそれは、「ランカを助ける為フロンティア船団を攻撃」「ギャラクシーの攻撃から船団を我が身を賭して守って死亡」等、色々極端だったのは確か。
 今回では、傷ついた仲間を助ける、と言う非常に分かりやすい演出で、バジュラにも心がある、と言う仮説を非常に分かりやすく見せている。

トライアングラー

 TV本編以上に、何だかドロドロです(笑)。
 並行し、グレイス達のフロンティア船団乗っ取りと、三島の逆転劇。そこからシェリルの逮捕と続くだけに、非常に衝撃的なトライアングラー
 まあ、三角形と言うより、三人一列のストレートだったけれどもw

まさかのルカ

 ルカ死んだー!? と思ったら生きてたー! ミシェルの死ぬ死ぬ詐欺に続き、ルカまでこんな目にw

三島な人生

 掌でボールをくるくる回していたのは、「全ては自分の掌の上」の暗喩だよなあ。
 キバットヴォイスで、せっかく巧く立ち回っていたのに、最後の最後であんな最後に……w
 結局、どこに行っても報われ無いレオン・三島であった。……まあ、一番かわいそうなのは、大統領なのかもw

ランカの行動力

 劇場版の各キャラクターは精神年齢高めに設定されているらしいが、一番精神年齢高いのは、明らかにランカ。
 芸能人と言う立場を利用してアルカトラズに入り、シェリルに奮起を促し、救出作戦のため、慰問ライヴを発案。がっつり所長を懐柔するなど、恐るべき資質の一端を見せつけたのだった。

シェリル救出作戦

 ツッコミ所がありすぎるので、箇条書きで。

星間飛行キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

 降臨、満を持して。

「みんな一緒にー!」「「「「キラッ☆」」」」

 囚人が訓練され過ぎwwwww

ラブリーボンバー

 S.M.Sの皆さんもノリノリwwwww
 アルト、その女装と衣装はスカート下のブースターを効率よく活かす為のセレクトなんだよね!? なんだよね!?

希望と絶望の歌姫

 希望も絶望も、バージョンアップぶりが半端じゃねえ……!

演歌の漢

 ほんと、何でアレで死んで無いの(失礼)?
 アルトを殴りつけ、
「人間は皆、何かしらの役を演じている」と今回もスパッと漢を魅せるオズマ。
 その上、ランカ達を守る為、ブレラと壮絶な新旧お兄ちゃん対決! その果て、宇宙空間に吸い出され、シェリルと共に死亡した……。……と思ったら、何とアイくんに助けられ生きてたwwww
 いやもうほんと、演歌な生き方をする男ですw

姫、卒業

 この辺りから、アルトの確変が始まったのかも知れない……。
 ついにミシェルから「姫卒業」の言葉を頂き、ついにアルトは男になった……どころか、何かもう性別とか人間だとかを飛び越えて、神域の男もかくやの領域にすっ飛んで行ってしまったような……。

最後の敵

 ラスボスは、インプラントによってバジュラを操ったフロンティア政府……を皆殺しにして装備を奪い取ったギャラクシーの電脳意識達。
 最後に戦うのは、TV本編のバジュラクイーンと言うスケールを上回る、バジュラクイーン+バトルフロンティアの合体! と来たもんだ。
 正直、その合体は最悪すぎる。それはどこのハオ様のオーバーソウル?

放課後オーバーフロウ

 ランカが自身が作詞まで担当した一曲。畢竟、ランカの青春すべてを積め込んだ一曲とも言いかえる事が出来る。
 事実、歌詞の「君」が思いっきりアルトの事です。本当にありがとうございました。

なみのり艦長

 まさかの艦長の弾けっぷりに吹いたwwww
 慰安旅行のサーファーぶりから始まって、ついにクォーターでも波乗りかよ!
 その上、いきなりシートから下りて波乗りポーズとか、この人、色々な意味でノリノリ過ぎる(笑)。野郎ども、波に乗れーッ!

シェリルとグレイス

 後半ストーリースタート時から死病に冒され、助かるには声帯を除去しなければならないとまで言われたシェリル。そしてあるいは、ランカの内臓を含む臓器をシェリルに移植するか……。と、いきなり過酷な選択を強いられたシェリル。
 そんなシェリルはアルトに思いを伝え、またランカに励まされながら、ある意味、ランカよりもシンデレラらしいシンデレラストーリーを歩んでいく。
 一方でグレイスは、途中までは黒幕臭がしていたものの、インプラントから解放されてからは、シェリルの母親的側面が強く押し出されてきた。 
 ……うん、これは後年製作された創作だな(ヲイコラチョットマテ)。

娘々Final Attack フロンティアグレイテスト☆ヒッツ!

 まさかサービスメドレーが、ここまでパワーアップする事が出来るとは……!!! 歌姫二人のエネルギーが、TV本編以上に凄い事になっているメドレーである。

イサム登場

 研究員の声で山崎たくみ氏の声が聞こえてきたからまさかと思ったら、ほんとにイサム役で出演だーッ! これは嬉しいサプライズ! ノベライズ版の影響!?

サヨナラノツバサ

 メサイア以上にフォールドクォーツを使用し、よりバジュラに近くなったバルキリーデュランダルで空を舞うアルト。
 歌姫二人の願いと祈りを翼に宿し、金色の光を翼に纏い、その心にはバジュラの痛みを感じながら飛ぶアルト。その姿は、まさに「傾いてやがる」!
 男でも無く、女でも無く。願いと祈りを届ける為にバジュラそのものの心を宿して、ひたすらにクイーンを目指す。それはまさに、芸能が神事であった頃の神秘性を連想させる美しさ。
 アルトのある種の自己の無さ、心ここにあらずな部分も、すべてはこの瞬間の為にあったのか……?

the end of triangle

実は幼い頃に出逢ってました」は、正直反則です……ッ。ロリシェリル、万歳ッ(ヲイィィィ)!
 何はともあれ、トライアングラー、ここに完結!
 しかし、ついに答えを出した瞬間、アルトを連れたまま、バジュラクイーンはフォールド。その行方は、杳として知れぬままになってしまったのだった……。

アイくん、超進化ああああああああああっ

 ところで、何、このアイくんの超進化ぶりwwwww
 TV本編では普通にバジュラとして成長していたのに、劇場版ではまさかのマスコット路線を貫き通しやがった……ッッッ(路線的にはTV本編と変わらないけれども)!
 とにかく、ビジュアル面での進化が著しいアイくんに劇場で大いに笑った。こんな超進化、ワームモン→スティングモン以来見た事が無い。
 ヴァジュラの学習/進化能力が、ランカのフォールド波からランカ(人類)との共生に最も適切な成長を学習した結果……なんだろうが、とにかく可愛いくらいあざといな(順番違)!

生き残った男

 そう言えばまだ言ってなかった。ミシェル、生存おめでとおおおおおおおおおおおおッ!!!!
 クランと共にがっつり幸せになって下さいッ!

エピローグ

 娘々サービスメドレーのスピード感に乗ったまま、勢いよく進んでいったTV本編。しかし、劇場版ではそんなに話は甘くない。
 アルトはバジュラクイーンと共にフォールド。行方不明。(バジュラは地球型惑星を居住地に選ぶようだから、死んではいないと思うが……)。
 シェリルは最終決戦の後、眠りにつく。TV本編のような都合のよい治療は行えないようで、ランカの血液を貰って徐々に治療を進めている様子。
 そしてランカは一人残された形で、巫女として、二人を見守る立場として物語を締めくくる。
 全体的に、『マクロスゼロ』のマオのようなポジションとなったランカ。この劇場版は、『マクロスゼロ』を下敷きにしたもう一つの『マクロスゼロ』として完結したように思う。

アンコール

 私は死んでも、歌は死なない!シェリルが無敵の歌姫過ぎるw
 そんなこんなで最後は、シェリルとランカ、『マクロスF』を牽引してきた二人の歌姫でシメ!……あれ? アルトは(笑)?

総評

 とにかく素晴らしい映画だった。どこもかしこも熱量が有り余っている感じが素晴らし過ぎる一作。
 二大歌姫のさらなるスケールアップはともかく、あの前代未聞の超銀河二股宣言を発して空から引きずりおろされんばかりだったアルトを、ここまで立派な日本男児として描き上げた事は特筆に値する。
 アルトが空を目指したのも、きっちり理由が描かれ、彼が歌舞伎役者の女形であった事の必然性も、すべてがピースがハマって気持ちよくハマっていた。
 とにかく、トライアングラーの一角、アルトがかっこよかった事が、一番良かった所だと思った。
 アルトと言うキャラクターは、自分の「お家」や「お役」としっかり向き合わせると、とにかく際立つ主人公だった。何せ女形だけあって、男と女のいい所取りだもんなあ(笑)。
 スタッフ、キャストの皆さま、ありがとうございました