最終話「リアルドライブ」

ストーリー

 地球律に伴う衝撃波が気象分子プラントを襲い、燃える海の中へと飲み込んでいく。刻一刻と訪れるタイムリミットを前に、超限界ダイブを行う波留。しかし、波留の反応はロストしてしまう……。

第一感想

 遅れに遅れ『RD 潜脳調査室』最終話感想を。
 以下感想。

万物は水から成る

 つまる所、この物語はこの言葉に集約していくものだった。
 メタルに溶けて一つとなった久島は、ついには海と一つとなった。それは海の記憶であり、水を宿す物質はつながっている、と言う証左でもあった。
 久島と同じように、海と一つになろうとする波留。「自然と一体化する事はダイバーの基本」ではあるが、恐れるようにその手は震える。そして久島から海が持つエネルギーのほんの一端を受け取った波留は、海上へと浮上する。
 これはまさに、哲学者タイプの久島と実践者である波留の違いが一番出た故の結果だろう。
 昔から、何かしらの「悟り」を開いた結果は肉体を捨て、超越的な存在になる事が多い。しかし一方で、肉体を持ったまま、「現世利益」に生きる価値・意味を見出す存在もまた同じように存在する。
 自然の大きな「何か」――この作品においては「海」と一体化する事。その一方で、自分自身の「海」とつきあって生きていく事。それは等しく価値のある事だと思える。
 万物は海でつながり、水から成る。ならば久島と波留、二人の別れは別れであって別れでは無い。一つの区切り程度のものでしか無いのかも知れない。

失くしたものを取り戻しにいった

 ミナモが波留の行動を称した言葉。そしてそれは、ソウタやホロン。そしてミナモ自身にも跳ね返る言葉である。
 ソウタは、ホロンを。ホロンは記憶を。ミナモは波留を。波留は、時間を。
 それぞれかけがえのないものを失い、その喪失を抱えて生きた。しかしそうして生きていく中で、それぞれ失ったものを再獲得していったのだ。
 ソウタとホロンは関係性を。ミナモは波留を、波留は失った時間を……。
 ソウタ、ホロン、ミナモに比べ、波留が再獲得したものはあまりに都合がよすぎて一瞬アゼンとしてしまった。いくら海の力が凄くても、それは少々都合がよすぎやしないかと。
 でも、それでよかったのだろう。その代償として、波留は久島を失った。何より、本当の意味で波留の失った時間は戻ってこない。しかしまた、ここから新たにやり直していけばいい。ここから生きていけばいい。そんな力強い、自然そのもののメッセージが発信されてているような気がする。

総評

 いい意味で「思想」に満ちたアニメだったと思う。堅苦しくなりすぎる事無く、地球に過剰な人格をせず、あくまでシステムとして描いた部分も好感が持てる。
 何より、分かりやすく光と海の輝きに満ちたハッピーエンドがエンターテインメントしていてよかった。何だかんだ言っても、やはり物語はハッピーエンドが一番いい!
 スタッフ・キャストの皆様、今までありがとうございました。そして、お疲れ様です!