#23「トゥルー・ビギン」

 フロンティア船団内の資源不足はいよいよ深刻化し、アイランドの放棄、酸素の欠乏などすでに航行が不可能なレベルに達しようとしていた。そんな中、つかの間の安らぎの時を過ごすアルトとシェリル。
 一方ブレラと共にフロンティアを出たランカは、バジュラの本星へと辿りつくのだった

第一感想

 アルトに「根っからの役者」と言うバイアスがかかっているせいか、何をやっても「役」を「演じている」ようにしか見えません……(挨拶)!
 明らかに個人的な問題なんだろうが、「それがお前の愛か」とクランに言われても、そういう場の空気、流れをアルトが読んで、その役を演じ続けている……そんな風に見える。見え続けてしまう。
 これはもう完璧、個人の認識の問題なので、このバイアスを解いてどう作品に。と言うかアルトの行動に感情移入できるかどうかが(別段それが正しい視聴方法でもないが)、クライマックスに向かう『マクロスF』を十二分に楽しむ方法なのでは無いか、と思う。
 以下感想。

ランシェとグレイス

 過去の回想から。互いに意見の相違で対立する二人。
 インプラントとゼロタイムフォールドネットワークで世界を変えよう、言うグレイスに対し、V型感染症にかかりながらも、バジュラをかばうランシェ。
 グレイスの「忌々しい虫けら」発言や、ランカの共存/戦闘回避の行動から見るに、グレイスの構想を実行しようとすればバジュラは全滅する。共存の道を模索しようとしたのがランシェ、と言う事なのだろうか。
 そもランカは生まれる以前に感染し、バジュラのネットワークの一部に組み込まれる存在となっているのも、ランシェの行動の一つだったのかも知れない。

ところで

 ランカの母親、ランシェ・メイのネーミングって、「ランカ」+「シェリル」+「リン・ミンメイ」からなのだろうか。
 だとしたら、何この無敵歌姫トライアングラー

安らぎの時間

 アルトがS.M.S.と一緒に脱走しなかったのは、シェリルがいたから――。
 そんな噂が流れるのも当たり前で、何とこの二人、一緒に料理を作ったりしてとってもいい雰囲気に! ど、同棲!? そりゃそばにいるとは言ってたけど! 同棲ですかー!?
 でもそのたわいのない、それでも貴重な安らぎの時間にずっと憧れていたシェリルが哀しい。幼い頃はスラム育ちだったと言う事もあり、余命いくばくもない現在が、実は人生で一番幸せなのかも知れない。

ブレラとランカ

 前から言われていた事だが、これで兄妹確定か……!
 いやこれで、実はグレイスの子どもでした、とか『ソウルイーター』におけるメデューサとクロナみたいな関係だと言われても困るがw
 しかしランカはバジュラ――しかもあい君に連れ去られ、ブレラはグレイスに支配され、とお先真っ黒な状態に!

人間とバジュラ

 ラスト間近。ここで、バジュラとは一体どういう生物なのか? と言う事がレオンとビルラーから明かされる。
 バジュラとは腸内細菌で思考し、個と言う概念を持たない群体生物とでも言うべき生物だった。フォールド波によるネットワーク生物である、と。
 事あるごとにランカの腹部が発光していたのも、この最近のせいだったのか。よかった「お腹の中にあい君の子どもがいるの!」とか、そんな事にならなくて(なってたまるか)。
 しかしこの細菌、人間の腸内には定着しないばかりか、脳を侵して最終的には死に至らしめる。ランカが無事なのは、生まれる前胎内で感染し、なおかつバジュラが人間を滅ぼすための先兵とするために、ネットワークの一部として固定しているからにすぎない、とレオンは言う。
 ゼントラーディとなら、同じ脳のある生物として共存できた。しかしバジュラとは、生物として、「つくり」そのものが違う。例えば蟻や蜂、そんな昆虫を理解しようとした人間などいない。それだけに、共存を模索するランカの覚悟が空しくもある。

それぞれの愛

 父親に反発し、家を飛び出したアルト。しかしその父親も、今では小さく見える。よきにしろ悪しきにしろ、アルトが成長している証拠であると言える。
 成り行き、流れ。そんなもので今まで行動してきた。そう取られても仕方がなかったアルト。だが、現在S.M.S.を抜け、軍で行動しているのは、元はと言えばランカを守りたかったから。それは翻すと、彼女の事が、アルトは……。
 そんなランカが人類を殺すと言うのなら、生き残りたいすべての人々のために、あえて自分がランカを殺す。そうクランの前で語るアルト。
 正直、まだこれが「悲劇の英雄」の役どころを演じていると言えなくもない。そう思うし、そう見えなくもない。だがこれは、物語から見て、初めてアルトが自分で選びとったものだと思う。
 そして、その思いを知り――と言うか改めて理解するシェリル。彼女は彼女で、薬を飲まず、フォールド波を高めている。そんな姿が男前すぎて泣ける。
 愛する人をこの手で殺す事になっても、命を縮める事になっても、自身の愛を貫くそれぞれの未来はいかに!?

次回は

 ついにバジュラとの最終決戦!