アン・マキャフリイ『パーンの竜騎士/外伝(2) 竜の貴婦人(下)』

 以下感想。
『パーンの竜騎士』シリーズ外伝『竜の貴婦人』の下巻。
 惑星パーン全土を襲った謎の疫病により、竜騎士までもが感染し、糸降りに対する防衛力も低下していく。
 竜騎士達は一致団結し、互いの防衛領域を超えた一つの竜騎士隊を作って対処していく。
 そして、この疫病に対するワクチン配布のため、時ノ間隙を超え奮闘し、結果死亡してしまう主人公モレタの英雄的行為が、下巻のメインストーリーとなっていく。
 このモレタだが、通常の『パーンの竜騎士』シリーズの主人公とはずいぶん性格を異にするのが特徴。
 まず、ある程度我慢強い。これがレサなんかだったら癇癪起こしてキレそうな所でもぐっと我慢し、相手を理で悟そうとする姿は、かなり特徴的。
 また、彼女は自身と感合した竜意外と最期を共にした、と言う所も特徴的な所。
 モレタの感合した女王竜オルリスは出産し、卵を見てやっていたので、彼女の相談役的立場ですでに現役を退いていたレリの竜・ホルスと共に行動を共にしていたからだった。
 互いにテレパシーでつながりあった竜と竜騎士は、どちらか一方が死亡してしまうと互いがその後を追う、と言うかなり強いつながりを持つ。そのつながりは往々にして喜びと言う形で描かれるのだが、本作では悲劇として描かれる。
『パーンの竜騎士』シリーズの中でも、人と竜のつながりを考える点で、外せない一冊となった。
 シリーズ中、バラードとしても謳われるモレタの活躍が十二分に描かれたエピソードだった。