アン・マキャフリイ『パーンの竜騎士(9) 竜とイルカたち』

 感想を書いた当時、手持ちの『パーンの竜騎士』もこれで最後だった。他にも多く刊行されている『パーンの竜騎士』シリーズではあるが、行ける範囲の本屋にはここまでしか売っていなかった……。
 そもそもマキャフリー作品自体、どうもあんまり本屋では見かけない。注文しようにも、昔からのシリーズだからすでに在庫が無いようだし……。
 映画化でもすれば増刷されるだろうが、あんまり映画向けでも無いしなぁ。
 まぁ、愚痴はここまでにして。
 以下感想。

竜とイルカと人間達

『パーンの竜騎士』シリーズの最大の魅力は、惑星パーンに入植してきた人間と、その人間が糸胞退治のために遺伝子改造で造り出した竜とのパートナーシップだ。
 だが、今巻では、「竜の挑戦」で少しだけ触れられた舟魚こと、イルカ達の人間とのそれが強く描かれる。
 惑星パーン入植の際共に連れてこられ、精神統合処置を施され、人語を解し、会話すらできるようになったイルカ達。
 精神を互いに深くつなぎ合い、一方が死ねば他方も死んでしまう、と言った強固でロマンチックな竜との関係と違い、ギブ&テイクなイルカとの関係性の違いが面白い。
「竜の挑戦」のサイドストーリーであり、その後を描いた物語であるそれでは、惑星パーンが重大な転換期を迎えた事が明言される。
 糸胞の脅威が無くなり、かつての文明を知り、蘇らせているこの時代は、かつての入植者達が惑星パーンで理想とした社会を作ろうとした状況と重なる事が。
 ついに真の開拓時代を迎えた惑星パーン。他の巻も見つけて、物語の空白を埋めていきたいシリーズだ。