アン・マキャフリイ『パーンの竜騎士(8) 竜の挑戦(上/下)』

竜の挑戦(上)―パーンの竜騎士〈8〉 (ハヤカワ文庫SF)

竜の挑戦(上)―パーンの竜騎士〈8〉 (ハヤカワ文庫SF)

竜の挑戦(下)―パーンの竜騎士〈8〉 (ハヤカワ文庫SF)

竜の挑戦(下)―パーンの竜騎士〈8〉 (ハヤカワ文庫SF)

『パーンの竜騎士』シリーズ第八巻。本当は第七巻の感想を書くべきなのだろうか、古いSFであるためか七巻が手に入らなかったのよ……orz
 それはさておき以下感想。
 第八巻は上下巻で<正史>が再開され、その内容も、それにふさわしい充実と驚愕の内容となっている。
 ジャクソム達が発見した宇宙船。そこで発見されたコンピュータ=人工知能音声応答装置=アイヴァスによってもたらされた古代の知恵……失われた惑星パーンの入植初期のテクノロジーを手に、ついに惑星パーンの人々を苦しめてきた糸胞絶滅計画がスタートする。
 長い年月をかけて書き綴られてきたシリーズだけあって、ついに来るべき時が来た! と言った感じの「竜の挑戦」。
 SFとファンタジーの合いの子(厳密にはSFなんだろうが)である『パーンの竜騎士』だけにその二つの要素が合わさった燃えるシチュエーションの連続は見もの。
 アイヴァスに保管されていたデータを元に、失われた記録・技術を補完するため惑星を駆け回る竜騎士達。
 竜騎士と、竜達による無重力空間の訓練や、宇宙船外での作業。
 そして竜達の持つタイムスリップ能力を用い、赤ノ星の軌道を逸らすと言う前代未聞の発想が凄い。
 元々、『パーンの竜騎士』の魅力の一つである竜自体が、

  • 「精神感応能力を持つ惑星パーン土着の生物である火蜥蜴を遺伝子改造して能力を強化した」
  • 「『感応』により人間と精神的にリンクする」
  • 「『間隙』と呼ばれる異空間を飛ぶ事で瞬間移動が可能」
  • 「さらにその応用で時間移動も可能」
  • 「可燃性の石を噛み砕きガスを溜める事で火を吐ける」
  • 「竜自身が『持てると認識したもの』であれば、どんな重さであってもサイコキネシスで保持する事が出来る」

等等、恐るべき設定を持つだけに、そんな無茶もできるものなのか。
 そんな無敵設定を持ちながらも、そのくせ、パートナーである人間を愛し、どこか人臭くてユーモアがある所が、『パーンの竜騎士』の竜達に感情移入させているポイントなのだろう。
 人間たちで言えば、ジャクソム達ももちろんだが、特にロビントン師に注目したい。アイヴァスの登場により、変革を迎える惑星パーンを快く思わない人間が過激な陰謀を画策する一方で、老齢ながらアイヴァスのもたらすものを常に楽しみ、大きな包容力で受け止めてきた。
 最後の結末は残念だったが、何でも、一〇巻の「竜と竪琴師」でロビントン師が主役だとか! うお、これは楽しみwwww