アン・マキャフリイ『パーンの竜騎士(4) 竜の歌』

竜の歌 (ハヤカワ文庫SF―パーンの竜騎士)

竜の歌 (ハヤカワ文庫SF―パーンの竜騎士)

『パーンの竜騎士』の「竜の戦士」「竜の探索」「白い竜」の「正史」とも言える三部作からいったん離れ、主人公を変え、別視点から惑星パーンを描く新たな三部作がスタート。
 ジュブナイル版『パーンの竜騎士』とも呼ばれる三部作で、これまでの「陰謀」や「政治」等と言う話から離れ、主人公メノリの視点から、惑星パーンの生活を描いていく。
 主人公メノリは、音楽の才能ある少女。しかしバラードを歌い、音楽を教える竪琴師は男でしかなる事は出来ない。
 自分の才能を愛してくれた師の死。両親からの抑圧の末、メノリはついに家を飛び出し、火蜥蜴を感合し、困難に立ち向かいながらも、ついに竪琴師への道を掴み取っていく。
 マキャフリー作品らしく、女性主人公が困難の末成功を獲得していく、と言うストーリー。現在読むとさすがに時代遅れな感じは否めないが、困難の末、自分の夢を実現させていく、と言うストーリーは普遍のものだろう。
『パーンの竜騎士』シリーズは人間と竜の共存関係が見所であるが、今巻では、メノリと竜の先祖となった惑星パーン原住生物・火蜥蜴との交流が描かれる。
 竜ほど精神的につながってはいないが、それでも互いの精神がリンクし、メノリとは共に歌さえ歌ってみせる。竜と共に人が歌う、と言う構図は、まさに『パーンの竜騎士』ならではのもので、他には無い魅力を感じさせるポイントだ。