福井晴敏『機動戦士ガンダムUC(1)〜(10)』
機動戦士ガンダムUC 1 ユニコーンの日(上) (角川コミックス・エース 189-1)
- 作者: 福井晴敏
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2007/09/26
- メディア: コミック
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設定もビジュアルも全部気合入ってて、『逆襲のシャア』以後の宇宙世紀の補完もさることながら、宇宙世紀の始まりにまで言及していく、おそるべき公式作品。
「ユニコーンガンダムは伊達じゃない」
とか黒い三連星のオマージュであるトライスターに、
「俺を踏み台にした!?」
とか言わせてみたりする辺り、やっぱり作者ガンダム好きなんだなあとニヤニヤw
とにかく、『Z』劇場版で否定された『ZZ』以後の宇宙世紀が描かれた、と言う事で、かなり重要な作品である事は間違いないと思われ。
以下適当にネタバレあり感想。
バナージ・リンクス/ユニコーンガンダム
「俺がガンダムだ!」
を、究極的に体現してしまった主人公。
サイコフレームに数々の残留思念と自らの思念を取り込んだ結果、ユニコーンガンダムを依代とした一種の精神複合生命体と化す。せっちゃん、思わず歯軋り(コラ)。
『逆襲のシャア』以降、サイコフレームを使った機体がろくに見当たらないなと思ったら、この事件がきっかけで技術が封印されてしまったらしい。
精神の進化を体現したバナージだが、オードリーの元に帰る、と言うその一念で無事肉体に帰還した辺り、宇宙世紀『ガンダム』の主人公としてはかなり珍しい部類に入るような気がする。
ところで、作中でカミーユの如く、
「俺の体を使ってくれ!」
と言うバナージの意見が却下されたのは、劇場版『Z』に対するメッセージと捕らえてよろしいのか(ヲイ)?
オードリー・バーン/ミネバ・ラオ・ザビ
こちらも、宇宙世紀の歴史で無視されていたミネバ姫が、ヒロインとして登場。
『ローマの休日』よろしく、オードリー・ヘップバーンをもじって偽名とし、バナージを運命へと巻き込んでいく。
「約束を違える事は許しません!」
と、あくまで姫として、上から目線でバナージに甘えるところなんて、リディじゃなくても「見せつけてくれる」とニヨニヨ。
感情移入できたキャラクター達
個人的に感情移入できたキャラクターは、しかしバナージやオードリーと言った主人公ヒロインではなかったり。
実は、フル・フロンタル、アンジェロ、リディ、アルベルトと言った、ああいう「可能性を否定する」キャラクターに、個人的には感情移入して読めてしまった。
人の持つ可能性。オールドタイプ、ニュータイプの別無く、人の心は響き合える、と未来を説くバナージ達。
対して、そんなものは不要。人には金になる現実を見せておけばいい、と言うフル・フロンタル。
そのフル・フロンタルに依存し、バナージと響きあったものの、自分とバナージの人生を比較し、自分の人生をみっともない、恥ずかしいものだと理解を拒んだアンジェロ。
生真面目に生きているが故に、自身の家の秘密から身動きが取れなくなってしまったリディ。
父親の機体に答えられず、叔母の傀儡として、異母弟のバナージに八つ当たりをかますアルベルト。
こういう、人の弱さや醜さを演じる事を与えられたキャラクターに過度の感情移入は危険と知りながらも、その弱さと自分自身のそれを重ね合わせて、「ああ、分かる分かる」
と読んで言ってしまった。
まあ、フル・フロンタルにしろ、アンジェロにしろ、リディにしろ、アルベルトにしろ、どっかヘタレなキャラクターだから、単なる自分のヘタレ萌え、と言う話もあるのけれど(笑)。
リディなんか、大層な理由をつけても、結局は「オードリーにフラれた」からバナージと戦ってるんだもんなwwww
『機動戦士ガンダムUC』最萌えキャラクター
本作最大の萌えキャラ。それは間違いなく、ジンネマンである事に異論は無い、と言っても過言ではあるまい。
ネオ・ジオンの残党として、妻と子を連邦に凌辱され殺された者として、果ての無い戦いに身を投じるジンネマン。
しかしその途中で助けたプルのクローンの一人に、娘と似た名前を与え、娘として扱いたいのに、失うのが怖くて娘扱い出来ない。そのくせ気を回しすぎる父親気質でバナージを導いては裏切って、それでも裏切り切れなくて。
最後の最後、もうここを見逃したら全部が駄目になる、と言う瀬戸際の瀬戸際で、
「父ちゃんが悪かった」
と感情をぼろぼろ露わにする。その落差に心が打ち抜かれるッッッ。
読んでいる時も、ジンネマンの所だけ優先的に読んでました。こんな愛すべき駄目オヤジ、もう愛するしかないじゃないか(訳が分からん)!