丸尾まる『ななし奇聞』

ななし奇聞 (CROWN SERIES)

　以前実家に帰った時、近所の本屋で偶然見つけた一冊。
『猫絵十兵衛御伽草紙』の作者が書いた作品で、以前から欲しいと思っていたので迷わず購入。主人公である不思議な力を持つ絵師・七篠が、旅の先々で出会う人々や妖怪との触れ合いを描く短編集。
　七篠の飄とした魅力に溢れた一冊であるが、中盤以降、妙に「そういう描写」が増えてくるのはどういうわけだろうか。
　例えば、七篠にご執心の宿屋の主人・佐伯。
　例えば、思い人を待ち続ける美女の霊……と思ったら男の霊だったとか。　
　例えば、七篠が佐伯に口移しで酒を飲ませて「えっっっ？！」だとか。
　いやもう何て言うか、何だろうこのにやにやにまにましてしまう路線転換！　いや、怪奇・奇怪にはエロはつきもの！　なのかも知れないが(笑)。
　このレーベルはコミックスが中々手に入りにくいらしいが、手元に置く事が出来たのは僥倖。これも「縁」と言う奴か。