和智正喜『仮面ライダー 1971-1973』

仮面ライダー 1971-1973

仮面ライダー 1971-1973

 以下感想。
「誕生1971」「希望1972」以降続編が出版されなかった小説版の『仮面ライダー』に、「流星1973」を加えた完結編。
 三冊分が一冊になっているので、六〇〇ページオーバーの大ボリュームになっている。
 仮面ライダーの設定(改造人間に強化スーツと強化バイクを加えた物)。本郷猛とハヤトとの関係。一癖も二癖もあるショッカー、アンチショッカー同盟の幹部達等、本作ならではの魅力の溢れる一冊。
 そして個人的に一番「巧い!」と唸らされたのは、本郷猛とショッカー大首領が本質的に同じものだと言う事だろう。
 ショッカーによって踏みにじられんとする命、その全てを善悪関係無く助けるため、果ての無い戦いに身を投じる本郷猛。
 一方の大首領もまた、新人類によって駆逐されんとする現生人類を一分一秒でも長く存続させるため、「進化の流れ」と言う絶対的で巨大な力に抗う存在だった。
 本質を同じくする者同士の、果てのない同族争い。『サイボーグ009』の神々との戦いとも通じるテーマは、現在においても戦い続ける仮面ライダーの疾走で幕を閉じる。
 大作は何かと未完も多いジンクスがある石ノ森作品だが、平成仮面ライダーで言うと『剣』にも通じる壮大な仮面ライダーの物語がきっちり完結を迎えられたのは嬉しい限り!