第43話「結婚行進曲・別れの時」

ストーリー

 一九八六年。
 音也を助けるため、迷いの森に踏み込んだゆりと真夜。二人はシルクモスファンガイアを退けつつ、森の中を彷徨い続ける。だが音也のライフエナジーは刻々と吸い取られていき……。
 二〇〇八年。
 ついに激突するキバとサガ。だが、渡は兄である太牙と本気で戦えない。その頃、ファンガイアと融合させられた嶋は、名護に自らを倒すよう命令するのだった。

第一感想

 過去編、現代編の両方で、二人のクイーンが退場……!
 真夜は現代編でも生き延びているが、もうクイーンとは呼べないし、そして深央に至っては……。何て言うか、つくづく深央……と言うよりクイーンは、業の深い存在だった。
 以下感想。

迷いの森の抜け穴

 迷いの森の中では、例えクイーンであってもファンガイアの姿になる事は出来ない。しかし、ファンガイアとしての力なら使う事は出来るのだ
 ……え、何その迷いの森が意味を成さない抜け穴(笑)。
 まぁ、人間態で能力を使えるのはよほどの高位ファンガイアに限定されるので、それも仕方が無いのかも知れないが。

キバットバットⅡ世の視点

 どうも音也を見るキバット父の目が気になった今週のエピソード。例え死の淵にあっても決してキングに首を垂れる事無く生き様を貫く音也に、何らかの興味を持った感じか?
 キバット族はキングやクイーンに仕えるモンスターであるが、しかし、それは決して強制では無く、あくまでキバット自身の意思でキングやクイーンに従っている、と言う設定らしい。
 とするなら、過去編のキングのあまりの器の小ささ(笑)に愛想を尽かし、裏切るフラグが立った、と言えるのかも知れない。
 ところで、キバット父の息子であるキバットは、まだ赤ちゃんだった渡に一目惚れし、渡に仕える事を決めたらしい。キングとしての器だけなら、渡の方が大きいと言う証左なのかも知れない。あくまで、器だけなら(苦笑)。

残酷な演奏

 死ぬ前にバイオリンを弾かせてくれと頼んだ音也。その演奏を頼りに、真夜は音也を見つけ出した。しかしその演奏は、ゆりに届く事は無かった……。
 もう音也の愛はゆりには向いていない。死の淵にあって、最後に遺したいのは真夜が愛した音楽。いくらゆりが自身の愛を裏切れないとしても、この結末はちょっと残酷すぎやしないか……。

抜き取られた力

 キングにクイーンの力を抜き取られた真夜。太牙と深央の結婚式でもそうであったが、クイーンは基本的に、キングの所有物的存在となるらしい。
 その力を抜き取るのも別の存在に転生させるのも思いのまま、と言う事のようだ。しかし、ここまでキングの力が圧倒的だと、もう笑うしか無い。ファンガイアが他の種族を圧倒してこれたのも分かると言うものだ。

移植された力

 サンゲイザーファンガイアの力を移植され、ファンガイアと化してしまった嶋。そうした太牙の意図は、キングとしての義務か。はたまた個人的な復讐か。
 ファンガイアを狩る組織の長をファンガイアにする事で組織の機能を停止させる……と言うのが、キングとしての意図。
 そして、嶋自身を忌み嫌っていたファンガイアにする事で意趣返しをする、と言うのが登太牙としての意図だろう。
 どちらかと言うと、キングとしての義務より、個人的な復讐が先行した措置だったように思える。と言うか、過去編でもそうだったが、キングが個人的な理由以外で動いた事はほとんど無い気もするw

名護、寸止め

 嶋に促され。ファンガイアとなった嶋を倒そうとする名護。しかし、その拳を振り抜く事は出来なかった。
 今までの名護なら、「正義」の名の下に一撃で葬っていたはずだ。しかし、今の名護では嶋を単純にファンガイアと認識して倒す事は出来なくなっていた。
 それが名護の成長であり、新たな弱点でもある。このまま、ヒーローとしての道を名護が進むのか。それとも、青空の会を乗っ取って再び新世界の神となるのか(笑)。見ものである。

二人だけの結婚式

 太牙と深央、二人だけの結婚式。しかし、黒いウェディングドレスとか、指輪じゃなくて鎖を巻くとか、ファンガイアの結婚式はエロいな……(最悪な感想だ)!
 しかし、深央の目的は、もちろん結婚式などでは無かった。太牙を油断させて、殺害する事が目的だった。腕だけファンガイアに変化させ、太牙を刺す深央。もちろんビショップは黙っていなかったが、それを太牙がかばう!
 例え刺されても、裏切られても分かっていても、深央をかばう太牙。その姿は、「男や……!」と称賛の涙を流すよりも先に、それほどまでに「愛に飢えていた」事に対し、哀れに感じさせるほどだった。
 父はいない。母もいない。養父である嶋は自分をバイ菌でも見るような眼で見る。押し付けられるのはファンガイアのキングとしての宿命だけ。そこに、「登太牙」個人は必要では無い。彼個人は誰かも何からも愛される事無く生きてきたのは想像に難くない。
 しかし、深央は違う。彼女は太牙の宿命に現れた、たった一人の結ばれるべき運命の女。彼女だったら、太牙個人を愛してくれるかも知れない。そして、そこにたった一人の血を分けた弟・渡が加われば……。ようやくそこから、「登太牙」自身の人生が始まる、といった太牙自身の言葉も、決して大げさではないだろう。
 太牙同様、渡も孤独ではあった。しかしブラッディ・ローズと言う超えるべき父の背中。母が残してくれた従者(=キバット)。渡は二親が残した愛と共にあった。
 だからこそ、太牙の圧倒的な孤独を哀れだと感じてしまう。例え殺されそうになった事が分かっていても、太牙には、もう深央しか愛してくれる可能性のある人はいなかったのだ……。

嶋の最後

 サンゲイザーファンガイアの姿と力を行使し、自ら太牙との決着に挑む嶋。
 その戦いは、結局の所、嶋自身の贖罪のための戦いだったのか。
 しかし、怪我を押してわざわざ現れる太牙も太牙と言う所だ。この二人、変な所でつながっているような。そんな事を考えさせられる。

別れの時

 嶋を殺された事に怒り、まるでファンガイアに変身するかのようにキバへと変身する渡。ついに互いに「本気」の兄弟対決が繰り広げられる。
 しかし深央は、太牙にかばわれた事で揺れていた。そして、キバの一撃から太牙をかばい、死亡してしまう。最後に、渡との幸せな結婚式を夢想しながら……。
 渡と結ばれるために太牙を手にかけ、手にかけた事で太牙の本当の優しさを知り、知った事で殺したかった太牙をかばい、愛した渡に殺された深央。
 恐ろしく業の深い生き方と死に方……。そうとしか言いようのない深央の最後だった。結局、最後にかばったのは「優しい太牙(兄)を、愛する渡(弟)に殺させたくなかった」からだろうか。 
 だが、深央は結局、幸せに死ねてしまった。おそらく、こじれる一方であろう渡と太牙を放り出して。最後まで自分本位の愛し方、生き方しかしなかった彼女だった……。
 けれども、結局渡と太牙は、そんな彼女を心の底から愛していたのだろう。もしかしたら、彼らにはできないその自分本位の生き方が羨ましかったのかも知れない。

次回は

 渡、過去へ? 劇場版以来の親子共演!