藤咲淳一『ケータイ捜査官7 滝本壮介の事件簿』
ケータイ捜査官7 滝本壮介の事件簿 (トクマ・ノベルズEdge)
- 作者: 藤咲淳一
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2008/11/18
- メディア: 新書
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第一感想
『ケータイ捜査官7』のノベライズ発売。
ノベライズは本編同様、ケイタとセブンの活躍を描く……では無く、我らが滝本とセブンの活躍をこれでもかと描いた珠玉の一冊!
さらにセブンの同型機であるフォンブレイバー6=ロクも登場する。
以下感想。
時間軸
本ノベライズの時間軸は、episode:「黒い過去」の少し後になる。
ゼロワンの説得に失敗した事から、フォンブレイバーと言う存在に対し、不審を抱くようになった滝本。最初はセブンを使いたがらなかった滝本であったが、そんな状況から、セブンを相棒=バディとするまでのストーリーが描かれる。
滝本のメンタリティ
滝本はケイタにとってお手本。目指すべき指標であり、確たる「大人」と言う存在である。だがこのノベライズでは、一人の男として、思われているよりもずっと繊細な滝本が描かれている。
そもフォンブレイバーに対し不信を抱き、それを使いたがらないと言う事かもそうだが、他にも、アンカーと言う組織の中においても居場所に悩むような所ある。
ネット犯罪を断固と憎む桐原。前向きに自己を保持している瞳子。使命に殉ずる強さを持つ美作。そして何より、フォンブレイバーに対する無条件の信頼。
そんな確固とした自己、メンタリティを持つ同僚のアンカー・エージェント達と比べ、性善説めいた考え方――環境により人は悪にでも善にでも染まる――と考えている滝本は、居場所の無さのようなものを感じている。
元警察官で、志村の後輩だったと言うのも驚きだったが、こういう弱弱しさとも取れる心の動きを、あの滝本が持っていた事――それを知る事が出来たのは、一つの大きな収穫であり喜びだった。この弱さはケイタも持っているものであり、ならばケイタもまた、滝本のような人物に成長していける証左であるのだから。
ゼロワンのバディ達
本作では、ゼロワンの三人のバディ達の詳細も描かれているが特徴。
中でも最後に自殺したエージェントは、麻薬密売に手を染め、ゼロワンを悪事に利用しようとしたとまで言われている。結局それを拒否したゼロワンだったが、裏社会に身を染めていたエージェントは、もはや自殺するしか無かったと言う。
いや、もう、ほんとゼロワンが可哀そう過ぎる……!
フォースが永久凍結され、もう登場しないと分かってさえ、ゼロワンのバディ運の無さにはもう涙するしかない。
カンノスケ/フォンブレイバー・ロク
ノベライズにのみ(現在不明だが)登場するエージェントとフォンブレイバーのコンビが、カンノスケとロク。
欧州方面を一手に引き受けるエージェントと言う事で、日本にはいないコンビ。フォンブレイバー・ロクは、一体どこをどう回ってそうなったのかなぜか江戸っ子設定(笑)。
セブンを食いかねないので本編には登場していないと言う事だが、なるほど、それもうなずける個性の強さだった。
ゴツダ
今回のミッションの標的となったのが、重機を販売している企業ゴツダ。このゴツダの販売している重機は、第一話でゼロワンが操作し、滝本を殺害したあの重機を作った企業でもある。
巡り巡って、救った企業の重機で滝本が死ぬ……と知っていれば、ひどい皮肉な設定だ。
「君の心を受信した」
「バディ……、君の心を受信した」
セブンの最後のこのセリフ。実は、これまでのセリフは皆二重鍵括弧(『』)で表記されていたのに対し、最後には通常の「」に変更される。
セブンが滝本と触れ合う事で、機械からさらに一歩進んだメンタリティ(と言えるのかどうかが適当かは不明だが)を手にした証であり、滝本とのコンビ、本当の始まりと言える。
読み応え抜群の今回のノベライズだった。次巻の発売に期待っ!