仁木健『リミテッド・ヴァンパイア(1) 髪喰鬼と吸血鬼』

 仁木健氏最新刊(もう二巻発売してしまったが……)。
 本人も触れているが、『マテリアル・クライシス』の続巻を出せなかった事を悔やんでいるのが嬉しいと言うか……。どれほど長い時間がたってもかまわないので、いつか出版される事を待ってます。
 そんなわけで以下感想。

髪喰鬼

 吸血鬼ものに分類する事が出来るが、主役は吸血鬼、ではなく髪喰鬼(かみくいおに)。吸血鬼の人血嗜好から人間の髪を喰う存在に転向した吸血鬼。
 人間の血液を吸う、と言う性行為の暗喩とも言われる耽美で淫猥な行為……ではなく、人間の髪をずるずる食べる、何ともヒネたこの発想が仁木健クオリティ!

無力な主人公

 変に力を持たない。持っていても決定的なハッピーエンドには届かない。そんな主人公を描く事が多い氏だが、今回もそうだった。
 主人公・由自は女好きでとりあえず出会った女には声をかける、もはや病気のような男だが、そんな男が髪喰鬼だが、しかしとんでもない美少女であるヒロイン・文を彼女にするため、髪喰鬼と吸血鬼の壮絶な戦争に参戦する羽目に。
 読んでいてこいつはアホかとしか言いようのない主人公の成長を見守りたい。果たして文を彼女にできるのか?

吸血鬼・宣戦布告

 吸血鬼と言えば夜の闇にまぎれ、ひっそりと……なんてイメージがあるが、そんな事はさっくり無視。
 何とこの作品では、吸血鬼が堂々と人類に対して自らの存在をアピール! 何とまぁ人類対吸血鬼対髪喰鬼と言う三つ巴の戦争に。
 このカオスが次巻でどんな風に展開していくのか……が楽しみだ。