第9話「職」

 ミナモとソウタの父・蒼井衛は常に仕事を生活の中心に置き、家庭人としては良き父親とは言えない人物だったが、電理研管理部技術課の課長として有能な人物であった。
 ある日、電理研でメタルのシステム介入が発生。衛は被害を最小限に抑えるために中枢サーバを機能停止させる。それによりシステムダウンの影響は最小限に抑えられたが、衛は責任者である久島の名を守るため、全ての責任をとらされる事になってしまう。

感想

 今回のエピソードはシブくていい話だった。
 研究者としての探究心を持ちながら、足元を見るバランス感覚を備えた人間と久島から評された衛。彼の決断が人工島を守り、そして島民の危機を救った。だというのに衛は評議会からスケープゴートにされ、課長から一研究員へと降格になってしまう。
 それでもクサらず、また一から新しくスタートを切る衛が男だ……!
 久島や波留が決して声を荒げる事無く、終始笑顔と静かな語り口を保っていたのも、自らの職を全うした衛に対する敬意を表しているように見えた。本当の男は同じ男を知るのだとしみじみ実感した。
 以下感想。

家庭へ

 家族と朝食も取る事が無かった衛が地位を失いつつも、しかし彼への敬意だけは失われないまま家庭へ戻る。仕事をすべての中心におきつつも、決して家族の事は忘れていない。ソウタとの思い出もそうだし、そしてソウタも父親の事を彼なりに思っている。
 メタルの発展は人を「個人」に分類して家族の団欒なんて死語になっていそうな印象もあるが、それはどれほど技術が発達しても決し失われていないものだった。 

メタルの海

 これまでも「地球律」なのでその深遠さが表されていたが、今回はそれが表面化してきたように思える。深層から何らかの意思を持ったものが、情報を手に入れて再び深層へ戻っていく。それは思いっきり何かが人類について情報を集めている行動だ。
 メタルが人間と人間をつなげる、集合無意識的なものだとすれば、そこには人間が無意識的に認知する超自然的なものがり、それが向こうから接触してきているのではないだろうか? と想像を掻き立てさせる。
 今回久島が波留に依頼したのも、二人がかつて遭遇した「海が燃える現象」と関係があったからだろうし、二人の手がそれに届く日が近づいているのだろう。

書記長

 久島に続きソウタまで……! 色っぽいが、どこまでも油断の出来ない人……!

次回は

 ってあれは一体……?