岩佐まもる『コードギアス 反逆のルルーシュ STAGE-4- ZERO』

コードギアス 反逆のルルーシュ』ノベライズ、完結編。
ザ・スニーカー』に連載されていた外伝『コードギアス 反逆のルルーシュ 朱の軌跡』も文庫化されるので、それを含めれば(『STAGE-0-』含めて)全六巻となるなかなかのロングシリーズに。
 普通、一クール一冊くらいの計算なので、実質三倍と言う分量に。そんなシリーズの長さに比例して、内容もノベライズだけでしか読む事の出来ない魅力に満ちた迫力ある内容に。
 と言うか、ノベライズされている部分が特区宣言〜ラストまでなので、読んでいて心臓に悪い事悪い事……。
 実はニーナのガニメデwith核爆弾と言う脅しのシーンが省略されているのだが、それはそれで逆に怖いと言う不思議。
「ああ! ニーナがノベライズから自分を吹っ飛ばした!」とか、ちょっと阿呆な事を考えたのも大目に見て欲しいところ。
 以下感想。

コーネリアから見た世界

 アニメ本編ではルルーシュサイドから見られた世界だが、ノベライズではコーネリア視点から再構成されている。
 特に、コーネリアの『姫』という母の期待に応えられなかった事に対するユーフェミアの想い。そしてそれを見守るダールトンの視点を強調しているために、ルルーシュのやったユフィへの行為が、なおの事残酷かつ、浅慮に感じる。
 しかも、コーネリアサイドには、あのキューエルの妹すら登場させ、その人格はともかく「自分にはいい兄だった」そんなところを描写している。
 いかに打倒すべき敵となるブリタニアといえども、そこにはルルーシュ同様、守るべき存在を持つ人間がいる――と言う事を改めて思い知らせる。
 守るべきもの。それはコーネリアにとってはユーフェミアそのものであり、ユーフェミアが日本人虐殺を命じても、彼女はユーフェミアを信じていた。それはコーネリアからユーフェミアが選んだスザクに対する騎士叙任につながり、V.V.にギアスの事を教えられたスザクが、ルルーシュを全否定する材料になってしまった。
コードギアス』は「ピカレスクロマン」であり、悪役はルルーシュであるとは判りきった事ではあるとは言え――ルルーシュが完全否定されても仕方が無い、とある意味感じるのだった。

アレは本当にギアスの暴走だったのか?

 アニメ本編では、ルルーシュがうっかり口を滑らせた――と言う感じだったが、ノベライズでは、何者かの作為によってユーフェミアを日本人虐殺と言う結果に導いたように「も」(ここ重要。あくまで不確定)読む事の出来る内容になっている。
 となると、それは誰だったのか? と言うのが問題になる。
 現状その可能性があるのは、

 の三人ぐらいだと個人的には思う。

V.V.の場合

 スザクにルルーシュとギアスの事を教え、ナナリーをさらうなど、C.C.の思惑をも超えた所で何かを画策しているようにも見える。まだ登場回数自体が少ないので何とも言えないが、黒幕である可能性は否定できない。

ブリタニア皇帝の場合

 まぁ、これも関与の可能性自体は否定できないと言うのが現状か。正直、黒幕云々よりも若槻ヴォイスのネタキャラになっているような気も、しないでもない。

マリアンヌの場合

 個人的に一番有力視しているのはマリアンヌ。ルルーシュ、ナナリーの母であり、殺害された悲運の女性。しかし現実には、自らの死を招きよせたようなフシもあり、またC.C.とも会話しているシーンも見られる。
 何より、ノベライズではブリタニア皇帝とマリアンヌが兄妹であると示唆されているようにも描写されている。特区日本に、ルルーシュは賛同しようとした。そこに、マリアンヌはルルーシュユーフェミアの仲が進展する可能性を見たのかもしれない。何しろ、初恋の相手である事だし。
 そうなると、V.V.と共謀してナナリーを遠ざけた――とも考えられなくも無い。
 なんにしろ、あの暴走の真実は『R2』で明かされるハズなので、今は妄想しつつそこに期待。

哀れなルルーシュとキス

 今巻のルルーシュは、とにかく哀れとしか言いようがない。
 ユーフェミアの特区日本宣言と、ゼロ=ルルーシュの罪を赦すと言う問いかけを、自分への侮辱と感じ、ユーフェミアを悪役にしようとする。しかしユーフェミアの持つ人間性にその考えを捨てようとした途端、自分の意に反した日本人虐殺へとユーフェミアを駆り立ててしまう。
 そしてせめて自分の手で、と殺害したものの、それが単純に「自分が楽になりたいから」と言う理由に気がついてしまった。
 その上で、情を捨てようとして政庁攻略に乗り出すものの、ナナリーがさらわれ、さっきまでの決意はどこへ? と情全開。そのせいで黒の騎士団からの人望も何もかも失い、ついにはスザクまで……。
 しかし、そんなルルーシュの傍にいるのはC.C.。
 ルルーシュとのキスも、ノベライズではこんな、さらにその関係性を強烈につなぐ表現に。

 ……それは本当にキスと呼べるものだったのだろうかどこか違う気もルルーシュにはした。
そうではなく、もう一度、この少女との間で交わされた契約。刻印にも似た、なにか互いの繋がりを強固な一本の綱で繋ぐような、そんな証――。

 ちょwww二人の関係が鉄板過ぎるwwwww
 もはや魔女と魔王どころではない二人の強烈なつながりをここに来て見せ付けられた。
 そして、あらゆる謎を放り投げたまま、『R2』に続くっ! のはノベライズでも変わらない。早く続きを見たいを思わせるこの求心力とも言える魅力を感じる一作だった。