朱川湊人『ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント』第4話「怪獣使いの遺産(前編)」(『ジャーロ』2008. SPRING)

 特撮ヒーロー作戦!のツバサさんからリンクしてもらいました。ありがとうございました!

第一感想

朱川湊人氏による『ウルトラマンメビウス』ノベライズも、ついに「怪獣使いの遺産」に。
 本編では、メイツ星人ビオが「父親が地球人にいわれのない虐殺を受けた」と言う理由で地球に保障を求めてきた。しかしノベライズの主人公であるカナタが父親を失った事故も、宇宙人のいわれのない攻撃である事が分かる。そして母親は精神を病む事となり、カナタがビオと同じ立場のキャラクターになる事になった。
『アンデレスホリゾント』も「怪獣使いの遺産」で分量的にもラストになるだろうから、ラストにこのエピソードを持ってきたのも、そも主人公をカナタと言うキャラクターに据えたのもこれを見越しての事だったのだろう。
 以下感想。

ドキュメント・フォビドゥン

 ノベライズオリジナル(?)設定として登場。その内容は、ウルトラ世界における暗黒面……。
 例えばジャミラが某国が見捨てた宇宙飛行士の成れの果てだった事。メイツ星人を地球人が虐殺した事など、決して地球人が正しい歴史だけを歩んでいたわけではないと言う事を示すファイル。
 ミサキさん曰く「隠蔽していたわけではなく、その内容は受け手によってはデリケートな反応を示す事もあるから」と言う理由でアクセスを制限していたファイル。
 この設定が、昭和ウルトラ世界観を大切にしている本編とノベライズ本作に、いい意味で説得力を与えているのは確かなのだが……。

新たな怪獣使いの遺産

 言うまでも無く『ウルトラマンメビウス』で描かれているのは地球人とウルトラマン=宇宙人との友情と絆。近年はマイナス方向にとられかねない科学技術としての象徴であるメテオールも、「人類がウルトラマンの想いに応える為のもの」とサコミズ隊長が語っている。
 そんな本作に当たって、朱川湊人氏が脚本を担当した本作「怪獣使いの遺産」はそれを真っ向から否定しているとも言える暗く重い内容である事だけは間違いない。
 このエピソードが『ウルトラマンメビウス』本編においてどれだけ「浮いて」いたか、それはちょっと検索すればぼろぼろヒットするからこれ以上の言及を避けるが、このエピソードに違和感を感じたファンは圧倒的に多数のはずだ。
 まさに「受け手によってはデリケートな反応を示す事もある」、ドキュメント・フォビドゥンそのものだ。
 しかし、こういう黒いダークな作風がウルトラシリーズの魅力であった事も事実。正直、『ウルトラマンメビウス』と言う大きな物語の流れの中で、その流れから大いに乖離していた本作が、ノベライズと言うあるべき姿に近い形で発表された時どんな結末を迎えるのか――。
 宇宙人との差異、そして理解をテーマとしている本作で、このエピソードが望まれた形に生まれ変わる事を願う。