第8話「鵺 前編」

 笛小路流の家元、瑠璃姫の婿を決めるための聞香の会に集まった三人の男達。そこにいつの間にか現れた薬売り。四人目の男が不在のまま、薬売りを交えて聞香が始まった。しかし四人目の男、そして瑠璃姫本人さえも何者かの手により殺されてしまう。だが男達はそれらを尻目に、目の色を変えて「東大寺」と呼ばれるものを探していた。




 今回は、香と言う形の無いもの、「匂い」を描いた事が面白いエピソード。それぞれ何故か色のついていないモノクロの男達三人が香を聞くたびに、ぱっと色づき、そこから季節、懐かしさ、はたまた馬糞の匂いまでも描かれていく。そういう試みが面白い。
 以下感想。



 もちろん我らの薬売りも聞きますが、彼が聞いても特に何も描かれなかったのは不満と言えば不満。これはあれですか、視聴者で妄想ですかそうですか(何)。
 しかし気になるのが、モノクロの男達三人が、何故か一部分だけ色がついている事。瑠璃姫の婿候補である三人は貴族でおじゃる言葉の大澤。商人である半井。そして香道には疎い東侍の室町。誰かに殺害され、何故か墓(?)のような石にかかってあった実尊寺の上着は色がついていた。と言う事は、彼らは死んでいる、もしくは死者の者を使っている? と言う事なのか。
 またそれぞれに、「東大寺」を探しながら別々のものを目撃する。
 大澤は老婆を。半井は犬を。室町は童女を。それぞれ別々のものを目撃する三人。互いに互いを牽制し、しかし瑠璃姫の死体を前にしても「東大寺」を求める三人。果たして、三人と、彼らが捜し求める「東大寺」の正体とは何か。




 今回の薬売りも、相変わらず魅せてくれる。
 明らかに視聴者目線での挨拶に始まって、婿を決める聞香の席に普通についてくる(笑)! 薬売り、あんた普通についていっちゃだめでしょー!
 そんな風にモノノ怪を斬りにやって来た薬売り。しかし、そんな彼も死体を前に「東大寺」を探す三人の強欲っぷりにポカーンと言うか、唖然としていたのが印象的。世俗的な事とはかけ離れた神仙のように超然としていて、エピソードによっては非情に腹黒い薬売りに取っても、人の強欲さはなお心を奪う事なのか……。




 果たして、モノノ怪・鵺を為す形・真・理とは何なのか。