第4話「海坊主 二の幕」

 薬売りの火薬で一難を逃れたそらりす丸。しかし未だ龍の三角を彷徨ったまま、脱出の手がかりすらなかった。そこに新たなアヤカシ・海座頭が現れる。海座頭はそれぞれに「お前が本当に怖いと思うものは何だ?」と訊ねていく……。




「海坊主 二の幕」。
「海坊主」のストーリーの前に、アヤカシとモノノ怪の違いが薬売り、と幻殃斉によって語られる。
 以下感想。



 アヤカシとは、現世に人や獣があるように、死んだ人間の魂や物に宿った魂やらの事。八百万の神と同じほどの数だけ存在し、その様はまさに千差万別。しかし、どのような筋で成ったにせよ、人にはその理屈は分からない。
 そしてモノノ怪モノノ怪「怪」とは病気、病の事。そして「モノ」とは荒ぶる神の事。神に人の怨み憎しみが結びつき、病気のように人を祟る存在、それがモノノ怪
 こうして書くと、薬売りの退魔の剣はこのアヤカシと「怪」=人の怨み憎しみとを切り離し、解き放つ事を目的としたものである事が分かります。互いに互いを分かてば、もはや両者は基本無害なものになる事ができる、と言う事になる。




 今回のエピソードで語られるのは、本人が一番怖いと思うもの。
 海座頭、と言うか魚そのものと言うビジュアルのアヤカシを、若本規夫氏が独特の粘っこい声で訊ねてきます。氏にかかれば、

「お前が本当に恐ろしい事は何だ?」

と言う何の変哲の無い言葉が、

ぅお前が本当に恐ろしい事はぁ、ぬわぁんだぁぁぁっ!!!

と、言葉にする事も出来ない衝撃的なセリフに早変わり(笑)。
 そうして応えた最も怖いものが、幻として見せられる。




 そらりす丸の持ち主であり、商人である三國屋は「金が無くなり、無一文になるのが怖い」と答え、自慢していた水槽の金魚を口から吐き出すハメに。
 侍・佐々木は「怖いものなど無い」と答えるも、実は人斬りであり彼が殺した亡者に飲み込まれる幻を見せられる。
 加世は「恋・結婚・出産などの女としての幸せを味わえないのが怖い」と答えれば、突然懐妊し、へその緒つきで魚を産み落とす幻を見せられる(余談ながら、この時彼女を支えた薬売りの「大丈夫。貴女の真は何も変わらない」と言う言葉がエロい。こればっかりですが)。
 そして薬売りは、「この世の果てには、形も真も理も無い世界がただ存在する事を知るのが怖い」と答え、自身が一切の無になってしまう。ある意味一番興味深いものですが、これら三つが無いと言う事は、モノノ怪が存在しない世界=自身の存在意義が無い世界、と言う薬売りの根本につながっていく問題なのでしょう。
 ついでに言うと、幻殃斉は「まんじゅうが怖い」と落語ヲチでお茶を濁そうとしたら、想像するのも恐ろしいまんじゅうを食べる事になったようですw
 他者の恐怖を尋ね、その幻を見せつける海座頭。
 薬売りは羅針盤を狂わせた犯人が坊主・源慧であると見抜き、海座頭に訊ねさせ、そうまでして龍の三角に行きたかった理由を知る事だった。
 ついに語り出す源慧。




 海をアヤカシの跋扈する海に変えてしまったのは、五十年前、虚ろ船と言う木をくりぬいただけの船に乗せられ、海に流された源慧の妹・お庸であると源慧は言う。それも、兄である彼の身代わりになって……。
 空からそらりす丸を見下ろす巨大な瞳から伸びた鎖に引っ張られて現れた虚ろ船。その中からは誰かがひっかいているような音が……!




 果たして、お庸が「真」であるのかどうか。本当に彼女は中にいるのか? そう思えば、まず外して違う答えを提示してくるのがこの作品であるので、一切油断できません。
 次回、「海坊主」大詰め!