第9話「化猫 序の幕」

 坂井家の屋敷では婚礼の儀式の最中だった。しかしそこで怪奇が起き、娘である真央が怪死を遂げる。混乱する屋敷の人間達の前に現れた謎の薬売り。彼はこの怪死の原因である物の怪・化猫を斬りに来たと……。




 ついに「化猫」感想に。
 今回は「四谷怪談」や「天守物語」のように原作は無く、完全オリジナル作品として製作されています。
 3DCGの多用、浮世絵風の影の無い表現、和紙風のテクスチャなど、時代をずらし「絵」の古さで怪談っぽさを出そうとした「四谷怪談」「天守物語」とは正反対の映像が特徴ですが、それが逆にサイケデリックな魅力を発していて大いに衝撃を受けました。
 この作品が人気で、続編である『モノノ怪』が生れたのですが、それはまた別の話で。
 以下感想。



 まずはともあれ、主役である薬売り。もう何て言うかこの男はまず怪しい。そして同時に妖しいと言うか、不思議な色気があります。おまけに囁き声が艶っぽい……。あれ? 感想がエロ関連ばっかり(黙レ)?
 物の怪を斬るために坂井家に現れた薬売り。初めはただの薬売りとして下働きの娘・加世と下世話な話をしていたのですが、輿入れする娘・真央が怪死を遂げてからはその態度は急変。札で結界を張り、家の者に捕らえられるも余裕の態度を崩さない。有無を言わぬ迫力だの凄みだの併せ持つあやしさを持つ、一目見れば忘れられないキャラクターです。
 本人曰く「つまらない人間」ですが、彼の持つ薬箱のように疑問が尽きない男。




 彼が現れ、物の怪・化猫が怪異を振るう坂井家。娘の輿入れと言うめでたい席に関わらず、その人間関係は最悪と言えるほど。
 下働きの三人、加世、さと、弥平ら。坂井家の頭首である伊顕はやりくり下手で家を傾けたばかりか妻の水江に頭が上がらない。性格が悪く酒ばかり飲んでいる伊國と隠居の伊行。そして用人である勝山と笹岡の二人。若党の小田島。
 上の者が下の者をひたすら虐げるばかりで、どこもかしこもギスギスしている。マシなのは、加世と職務に忠実で暑苦しいながら実直な小田島ぐらいでしょうか。
 娘の真央が死に、一部屋に集められる家の者達。しかし結界から出た弥平が化猫に殺され、天井から降ってきたところで、薬売りがその手腕を発揮する。
 マシンガンのようにお札を貼っていき、化け猫の「形」を見破る。そして薬売りは、家の者達に物の怪を為す因果を探っていく。
 アクションやお札の文字と色で化猫の接近を表す描写など、一目見て作品自体が只者ではない、そんな迫力に満ちています。



 次回は二の幕。果たして化猫を為す「真」と「理」とは。