第4話「四谷怪談 大詰め」

 右衛門はお岩の祟りにより、常に怯える日々だった。やがて周囲の人間も殺されていく。そして、ついに……。




 四谷怪談、ついに大詰め。
 右衛門は父も母も、友人すら殺され、その前に与茂七が敵討ちのために現れる。
 以下感想。




 ここで何が怖いかと言うと、お岩が直接害を為すわけでは無いと言う所。
 お岩達が住んでいた家にいた鼠に、母も自らも食い殺され、最期には刺し殺されてしまう。お岩が死んだ時、黒猫は縁起が悪いと言って追い出された。しかし猫は鼠を取るもの。それを追い返した事が逆に悪かったのではないか……。
 タタリが鼠に作用して、彼らを襲っているのではないか……そう思わせる一幕。
忠臣蔵』がその背景にある物語らしく、与茂七の敵討ちが成った所で『四谷怪談』の幕は下ります。




 しかしそこから、またもやの実写パート。祟りと共に百八十年生き続けた原作者の鶴屋南北の語りが今回の真の幕。
 四谷怪談の物語は、物語が発表されて以来、百八十年間語り続けられていた。しかしそのたびに、スタッフ・キャストに謎の事故、自殺が続くと言う祟りを生み出す作品となっていた。
 お岩と言う女性にはモチーフはあるが、今日語られ続ける『四谷怪談』の原作は鶴屋南北が描いた創作、フィクションである。
 本当に、お岩は成仏したのか。死後も続くお岩のタタリは、本当に彼女自身の為した事なのか。
 否、そうではなく、『四谷怪談』と言う虚構が現実を侵蝕する祟りとなっている。そしてその祟りは「観客自身が祟る事を望んでいる」限り続く。人々が望み続ける限り、本当の意味で祟りは終わらない。
 だから真の意味で祟られるのは、観客であり、そしてお岩と言う祟りを生み出す創作者なのではないのだろうか。
 そうして身を差し出す鶴屋南北に、お岩は……。




 物語から現実へ、じわじわと侵蝕していく祟り。最後の最後まで、右衛門の幻想か、祟りか区別がつかなかったのは、この本当の祟りの原因をラストにするためにだったのか……。
 物語は物語で終わらない。現実に影響し、また作用する力を持った何かが物語であるのかも知れない。
 それがたっぷり四幕、堪能した恐怖でした。お岩の成仏を願いつつ。