久正人『ジャバウォッキー(1)』

ジャバウォッキー(1) (マガジンZKC)

ジャバウォッキー(1) (マガジンZKC)

 絶滅を乗り切り進化した直立恐竜サバタと絶望する女スパイ、リリー。
 異色タッグが19世紀末を駆ける異色タッグノワールアクション!



 19世紀末を舞台にしたスパイアクション。
 ifの歴史の裏で絶滅を超えて進化した直立恐竜達が様々な形で歴史に介入し、暗躍すると言う歴史と恐竜にはたまらない作品です。
天才てれびくん』の『恐竜惑星』を思い出します自分は直撃世代です。



 一巻ではロシア帝国紋章の「双頭の鷲」に隠された謎を追って、サバタとリリーがタッグを組み、秘密結社「イフの城」に参入するまでを描いたものです。
 ロシアには二つの帝国があり、一つは人間、一つは恐竜。恐竜達は非常時に軍に参入する事で領土を得ている。
 そしてその恐竜達の指揮権はロシア皇帝肖像画に描かれているオーブ=恐竜の卵=王子にある。と言う歴史的なギミックもさる事ながら、主人公らサバタとリリーのキャラクター設定も魅力的。



 サバタは他の恐竜の卵を喰う恐竜オヴィラプトル=「卵泥棒」と言う汚名をきせられ(最近の研究ではその可能性は無いとされる)、人間に抑圧される中のはけ口として同族からも虐げられる。
 一方リリーは、両親の汚れ仕事を引き継いだせいで汚い仕事ばかり押し付けられるスパイ。
 しかし両者とも、「辛いのは自分だけじゃない」と知っている。
 知らない間に汚い運命を押し付けられても、それでも運命に負けず耐えて明日の希望を守る――。
 独特の作画とあいまって、非常に魅力的なタッグアクションに仕上がってます。



 ちなみに折り返しの作者紹介では、作者もスパイと言う設定で、波乱万丈な人生送ってます(笑)。