『劇場版 仮面ライダーカブト GOD SPEED LOVE DIRECTOR'S CUT VERSION』

 一年通して観た『カブト』は、今でもあまり好きになれない作品です。劇場版も同様で、最初観た時には正直面白くなかった。
 特にSFギミックがザルもいい所で、キャラクターが動く世界観に感情移入できなかったのが最大のポイントでした。
 全然しかし今回のディレクターズカット版(以下DC版)を観て評価が少しだけ変わりました。
 それは、『獣王星』『地球へ…』や『時をかける少女』(2007年)などの、SFギミックを通してキャラクターを描きたい作品と『劇場版カブト』がまったく同様だと気がついたからです。



 自由を、組織を、自らのプライドを愛するが故に戦士達は戦い続ける。
 病に倒れるひよりを想う愛が極まれば、コーカサスのライダーキックの前にだって飛び出せる。時間だって巻き戻せる。歴史だって変えられる。
 すべては『GOD SPEED LOVE』。つまりそう言う事。それがすべてだと。
  


 ギミックに拘泥するでなく、感情をストレートに表に現す総司達キャラクターに、素直に視点を置いて鑑賞する事が、この作品の一番いい楽しみ方だと気がつきました。




 その点において、DC版では各戦士のシーンが追加され、特に大介(ドレイク)、大和(ケタロス)、黒崎(コーカサス)の三名はより印象深いものになっています。
 特にケタロスの追加シーンが素晴らしい!
「大気圏に突入して爆散、死亡」。 
 と言うライダー史上後にも先にもコイツだけと言う死に様を見せてくれたケタロスですが、何と大気圏突入中に総司から差し伸べられた助けの手を払いのけていると言う屈指の笑いどころが!
「私のこの情熱の炎は何者にも負けない!」
となどと言いいながら大気圏に突入!
 もはやギャグにしか見えない(笑)!



 オーディオコメンタリーも収録して内容盛り沢山な『劇場版甲斗神速愛無修正版』(無理矢理漢字化)。あの時『カブト』なんて面白くねーよ! と思った全ての皆様。時が経てば見えてくるものあると思うので、一度観てみて下さいね。



『ちゃぶ台をひっくり返してもいいのは飯がよっぽど不味かった時だけ』とは天道語録ですが、ひっくり返すと判断するには、まだ少しだけ早いかもしれませんから。