『機動戦士ガンダムSEED C.E.73 -STARGAZER-』

機動戦士ガンダムSEED C.E.73-STARGAZER- [DVD]

機動戦士ガンダムSEED C.E.73-STARGAZER- [DVD]

 三回に分けてネット配信された作品を一まとめにしたものです。一つ一つは十五分と短いものですが、やはり一度に観るとボリュームがあります。


 ストーリーは『SEED DESTINY』でのユニウスセブン落下→デストロイ戦前→ジブリール宇宙に逃亡時と、本編のストーリーの裏側で起こった深宇宙探査開発機構(以下DSSD)とファントムペインとの戦いを描いたものになっています。
 ユニウスセブンの落下被害、デストロイやエクステンデッド達、アズラエルのゲスト出演など、本編とのリンクもあります。
 ナチュラルとコーディネイター、と言うよりは議長の思惑に乗せられた戦争の裏側で、ひたすら外宇宙に視線を向ける星を見る人々の戦い……と言うよりは、夢のストーリー。
 種シリーズ作品的な萌え(と言う言い方もちょっと違いますが)を求める人々にはちょっとおすすめできない内容で、C.E.世界設定で中々硬派なSFを展開しています。
 スターゲイザーに搭載されているシステム「ヴォワチュール・リュミエール」のシステムの根幹でもある太陽風を受けて「どこまでも無限に加速していく」事が、ある意味この作品の種シリーズと共通するテーマになっています。
 人々の宇宙への夢しかり、悲しみと憎しみの連鎖であったり。


 以下ネタバレ感想。
 ひたすら外宇宙に向かってフロンティアを拡大していこうとする人々の夢を描いた作品だけあり、それを象徴するようなキャラクターが特徴的です。
 横を向けば他人に嫉妬して、下を向いたら頼りにしてくれる人がいなくなったらどうしようと怯えてしまう。だから上を向こうと夢の根源であるエドモンド。
 テロで両親を失い、星が好きだった過去を忘れてファントムペインとして戦うスヴェンは過去。
 物語を最後まで見守るソルは現在。
 スターゲイザーと共にひたすら上を見上げるようなセレーネは未来でしょうか。


 そんな人々が、夢のために進んでいこうとする姿は、静かながらも熱い独特のカラーがあります。
 デスティニー・プランがどうだの、覚悟がどうだの、議長やキラ達が語っている裏で、人間にとっては完全後付設定とも言える夢にかける人々の物語は、個人的には好意を持って受け入れられるストーリーでした。
 

 以下箇条書きでメカ語り。

  • ジン タイプ インサージェント

 この時代設定ではすでに旧型ながら、戦車程度ではMSはビクともしない、と言うMSの強力さを見せ付けてくれました。
 しかも対戦相手となるリニアタンクの戦法は「物凄く接近して攻撃」「榴弾の輻射熱で蒸し焼き」など、ある意味「常識的な」戦法である事がツボ。 

  • ブルデュエル

 一番印象的だったのが散りざまだった機体。しかもパイロットのミューディーの悲鳴でした。笑……うところではありません。

 ある意味でこのストーリーで一番衝撃的だった機体。
 三ツ首+三体+ビームファングをブルデュエルにざくざくざくざく突き立てている姿はおぞましいとすら言える恐怖でした。
 あぁ……バクゥはあんなに可愛らしいのになぁ(それもどうかと)。

  • ヴェルデバスター 

スタンダートな活躍を見せてくれました。いや、ほんとそれしか。

 アストレイがこんなところにも。ジャンク屋組合が作ってるなら、組合は儲けてるなぁと感心した機体(ヲイ)。
 正直、本編ではやられ役とも言える機体ですが、アストレイの名がついて動いていてくれるなら、ほんとそれだけで心が癒されます。

 主役たるスターゲイザーの影として設定された機体。
 ワイヤーによる移動が印象に残りました。お前はどこの忍者だ!
 宇宙に放棄する事になったストライクノワールを見るスウェンの惜しむような表情がより機体に対する愛情をかきたてられます。
 種本編ではメカ演出はヒロイックでもあくまで兵器と言う立ち位置なので。

 本作主役メカ。
 狙ってるなと思いはすれど、かっこいい機体です。高速移動、光のリングと燃える要素満載ですね!


 さて、問題はあのラスト。酸素は二十七日間=六百四十八時間しか持たない事に対し、ソルがスターゲイザーを見つけたのは六百六十九時間後。
 当然酸素は尽きているだろうけれども、薬で呼吸を抑えていたのならあるいは……? と思わせるED。
 個人的には、生きていて欲しいですが、どうなんでしょうか。
 そこは、星にでも訊いてみるところかも知れません。