フィリップ・リーヴ『氷上都市の秘宝』
- 作者: フィリップ・リーヴ,安野玲
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2010/03/12
- メディア: 文庫
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以下感想。
第二巻から十数年後。トムとヘスターはアンカレジで結婚し、一人娘のレンを授かり、平穏な生活を送っていた。
しかしそんな退屈な生活に飽き飽きしていたレンは、盗賊に騙され、アンカレジの図書館に納められていたブリキの本なる一冊の本を盗み出してしまった挙句、そのまま誘拐されてしまう。
かくてレンの冒険と、娘を取り戻すため、トムとヘスターの旅が再び始まるのだった。
有りし日から数十年。トムと結婚し、娘も授かって母になってちょっとは丸くなったか? と思われたヘスターだったが、全然そんな事は無かった。相変わらず他に類を見ない過激さを披露し、トム意外の人間関係を頑なに拒否し続けている。
そんな彼女でも、レンを愛しているのだからまたそれがキツく、自分達の家族を侵す人間、それらをすべて殺していれば、またいつか、家族は仲良くなれる、と本気で思っている所が泣ける。そのくせ、単独行動となると途端に生き生きし始めるのだから驚く。
例え愛する男を、娘を得ても、ヘスターの心根が変わる事は無いと言うのか……。その事実を、一人娘であるレンが明らかにし、かつて犯した罪を弾劾する、と言う展開なので、これがまた驚愕の一言。作者、容赦無しッ。
そして移動都市シリーズの一方の主役であるストーカー達も今回は大盤振る舞い。古代のストーカーであり、前巻で大破したシュライクが再び復活! 入れ替わりで前面に立ち、戦争を指揮してきたストーカー・ファンと共に、ストーカーの魅力と悲哀をたっぷり振りまいてくれる。
この移動都市シリーズの見どころは、主要キャストがほとんど死なない所で、死んだ! と思っていても、キャラクター同士が思いもよらない出会いをして、次の展開を心待ちにさせてくれる所にある。
今回のラストでは、何とヘスターが家族と別れ、再びストーカー・シュライクと再会を果たしてしまう。
バラバラになった家族。ブリキの本の謎を手に入れたストーカー・ファン等等、気になりすぎる所で終了! 完結編となる、四冊目の発売を切望!