吉村夜『アスカ -麻雀飢狼伝-』

アスカ ―麻雀餓狼伝― (スーパーダッシュ文庫)

アスカ ―麻雀餓狼伝― (スーパーダッシュ文庫)

 吉村夜の新作は、何と麻雀もの! って、これライトノベルでやるのはどうなの!? と思ったら、立派にライトノベルでした。著者自身が麻雀好きを公言しているだけって、麻雀ものとしてもレベルが高い。
 何となく過ぎていくなあなあの日常に嫌気が差した主人公・アスカは、祖父譲りの麻雀の腕を使い博打打ちとしての人生を歩み始める。 
 仲間と組み、麻雀で大金を稼ぎ、すっかり「狼」気取りでいた所で遭遇する裏切り! 転落! そしてドロップアウト。まさに人生大海に浮かぶ一艘の小舟状態。
 ラノベながら、著者の特有の生活哲学が織り込まれた一冊でお金は使ったら減っていく、と言う事実が重いのなんの。ラノベで黙殺されているこういう事にがっつり目を向けているのが、著者作品の目が離せない所だと思う。
 番号は振っていないが、まだヒロインの事情なんかも語られていないので、まだ続きがあるのは確実。
 何者でも無かったアスカ。今はここにいる。しかし、ここからどこに行こう。飢えた狼のように彷徨うアスカの行く先はいかに。