episode:「明日未来」

ストーリー

 警察によってアンダーアンカー本部が押さえられるも、セブンを手に一人本部を脱出するケイタ。そんな時、ついにジーンの自我が目覚める。凄まじい速さで情報を吸収し、並列分散リンクを繰り返した末、ジーンはついに一個の生命体として世界に生れ出るのだった。

第一感想

 よう……やく観れたよ『ケータイ捜査官7』最終話! すでに最終話から二ヶ月ってなんだそれ……orz
 しかしそれだけに、感動もひとしおと言うか何と言うか……もう涙が止まりません……!
 以下感想。

託されたケイタ

 警察の手入れを受けるアンダーアンカー。施設は管理下に置かれ、フォンブレイバー達も同様に。
 しかしゼロワンを殺され、今なおジーンは社会に着々と根付き始めている。こんな現状は「おかしい」「ふざけるな」と感情を爆発させたケイタは、セブンを奪って警察から逃走!
 だが、その逃走をちゃっかり支援する宗田達が頼もしい! そして、本編では明かされなかったが、滝本の先輩であり、ケイタがエージェントである事も知っていた他ならぬ志村がアンカーエージェント達の「ケイタに託した」想いを理解した事が嬉しい。

ジーンの目覚め

 ついに来た、ジーンの目覚め。本来無いはずのプログラムを自分で作ったのか、手足を伸ばし、勝手に動き出し、周囲の人間達に次々と問いかけていく。
「人間って何?」「人間で幸せ?」「人間とは何?」「何のために生れて来たの?」と。
 普段なら何でもない――と言うより、疑問に思ってもしょうがないもの。追及すればキリが無いもの。生活に追い立てられて置き去りにされていく疑問を、次々と投げかける。その姿は、まさに赤ん坊そのもの。
 物凄い速さで周囲の人間や何やらから知能を獲得していくジーンは、ついに勝手に、近くのジーン同士で並列分散リンクをスタート! 次々とそれを繰り返し、情報を獲得していった結果、一個の情報生命体ジーンとして誕生する。
 赤ん坊から、大人へ。ジーンの口調の成熟具合が、それを如実に表しているのが不気味だ。肉体に支配されない、まさに究極の情報生命体。

気合いのセブン

 セブンがフォンブレイバーである以上、ジーンの影響をネットワークごしに受けないわけはない。しかしセブンは、何と「気合い」でジーンの影響を跳ね返す!
 まったく機械らしくない不可解な現象としか言いようがない。しかし、たっぷり一年間、ケイタとセブンの絆の構築を見せられた視聴者の立場からすれば、むしろ当たり前のように思えてしまうのが不思議だ。

「真の敵」

 ゼロワンがメールで示唆した「真の敵」。それは、ゼロワンから見れば伊達であり、それは本人も認めていた。しかし、本当の意味での「真の敵」とは、伊達の事では無く、間明の事であった。
 ジーンと言う新たな知的生命の誕生を見るためならば、人類が滅んでもかまわない。そのために、ゼロワンも、伊達も、政治家だって利用する。
 そしてこれまで登場してきたネットワーク犯罪者のようにバックボーンがほとんど語られなかっただけに、その不気味さもひとしおだが、何より演じる高野八誠氏の怪演が光っていたキャラクターだった。

セカンド、フォースの散華

 一個の生命体と化したジーンを消し去るため、使われる事になった切り札が、フォースに凍結されていたウイルス。ラムダを破壊するウイルスを使えば、ジーンですら破壊する事が可能であるかも知れない。
 そのためにフォースの凍結を解除。そしてソリッドを着身したセカンドが、自己判断でウイルスを使用する。
 まず自身にウイルスを感染させ、そのままジーンと並列分散リンク! まさに捨て身の戦法であったが、強大かつ巨大な情報生命体となったジーンには、もはや通じるものでは無かった。あっという間にワクチンを作られ、逆に回路を焼き切られてしまった。
 散華するフォース、そしてセカンドの最後に涙……。
 あのちっちゃい手をいっぱいに伸ばすあれが、またたまらないんだ……。 

世界の最適化

 人間と共存しようとしていたジーンだったが、セカンドの攻撃で、「人類は他の知的生命体の存在を許さない」と言う結論に至り、「世界の最適化」をスタートする。
 サブリミナル映像と音楽を使い、脳の機能を停止させる、恐るべき効果で、一切の流血無く人間の機能を停止させていく。ばったばったと人が次々と倒れていく映像は、まさに恐怖としか言いようがない。使われている映像が、あの「URL」と同じだったのも恐怖。人とのつながりを拒絶したものが、人々と世界のつながりを切り離していく、恐ろしい構図だ。
「やられたらやりかえすなんて人類と同じレベルだ」と非難するケイタに対しても、ジーンは「あえて人間と同じレベルに落としているんだ」とどこ吹く風。
 その物言いすら人間のようで、知的生命体は、何であっても別種の存在を許さないのかと複雑な気持ちになる。
 しかし、悪いのはやはり人間の方なのだ。ネットワークの中のジーンの存在を抹消しようとした伊達達。そしてジーンの存在に不安を感じ、電化製品を破壊する人々。「共存できるんじゃないか」なんて言う人間は、やはり少数派でしか無い。
 人間に世界の管理を任せていれば、どこでジーン達が暮らすネットワークの平和が脅かされるか分かったものでは無い。やはり、人間は愚かであるのだ。圧倒的に……。 

足りなかったもの

 ジーンの誕生に色めき立った人間にも。そして世界を最適化しようとしたジーンにとっても足りなかったもの。それは、「時間」だった。
 ケイタとセブンのように、絆を構築する時間。互いを理解するための時間が。
 様々な事件を通じ、互いを理解し、信頼を構築し、絆を結んできたケイタとセブン。だが人間とジーンの間には、圧倒的にそれが足りなかった。人間は理解が遅すぎ、ジーンは成長が速すぎた。
「我々のようにいかなかったのだ」とセブンは言ったが、まさにそうであったのが哀しいとか言いようの無い事態だった。

最後の電話

 桐原の下にかかって来た、サードからの電話。ジーンに取り込まれんとするサードが、最後の力を振り絞ってかけてきた電話だった。
 夕暮れ。SL列車。黒電話と言うアナログなイメージの中に、ジーンを象徴するデータの流れと瞳がじっとサードを見つめているビジュアルが美しくも空恐ろしい。
 ジーンと同様、一個の端末に戻ってしまったサードだが、その意思は、しっかりと桐原に伝わった。桐原とサードの間にも、しっかり絆が構築されていた。それは美しいが、しかし桐原がたった一人の家族を失ってしまった事は悲しすぎる……!

バディシステム

「絶対に守ってみせる!」
 そう言ってジーンの攻撃から逃げ続けたケイタだったが、最後の最後でつきつけられたのは、セブンを破壊する事だった。
 バディシステムにより構築した自我が、ジーンをセブンの体に閉じ込めると言うにすら理解出来ない力を産んだ。そして最後にバディシステムに求められたのは、バディを破壊する事だった。
 当然、セブンを破壊する事何出来ないケイタ。そこで滝本の名前を出すのも卑怯すぎるよセブン! だが、そうしないと世界は救えず、またセブン自身の決意を無駄にする事になってしまう。
 セブンを破壊したのは、ケイタの涙……。最後に涙の形に結晶化し、その内部に「7」のキーを収めた姿になってしまったセブン。
 もうこの辺りは、文字にするのが不可能! ケイタとセブンの絆が、ここにすべて存在していると言っても過言では無いシーンだった。

二人の明日未来

「いつか起こりうる未来が今起こった。それだけの事だよ」
「凄い事が起きるはずだったのに!」

 そう言った間明の姿は、実は、第一話のケイタそのものだった。
 親友と一緒に家出して、富士山に行けば何かが起こって何かが変わる。そう信じて考えなしに飛び出したケイタそのものだった。フォンブレイバーが自我を持てば、「凄い事が起こる」。どこがかつてのケイタと違うだろうか。
 だが、今のケイタは違う。様々な事件をセブンと共に解決し、絆を結んできたケイタは、「いつか起こる何か」を期待するだけの子どもでは無い。
 だからこそ、だからこそケイタは間明を殴る事が出来なかったのだろう。振り上げた拳をひっこめる事が出来る、ケイタこそ、本当の大人なのだろう。

遊びの約束

 空っぽになったアンダーアンカー本部。セブン、セカンド、フォースの亡骸を手に、また「遊ぶ」約束をするケイタ、桐原、瞳子。そしてそれを見守る美作部長。
 今度は同僚エージェントとしてではなく、一個人として、結ばれた絆は絶える事無く続いていく。
 こうやって仕事では無く、「遊び」のためにまた集まる約束ができる事が「大人」と言えるのだろう。二人の大人の中にケイタがいるのも、ケイタが立派に大人になったためなんだろうと思う。

来るべき時代の大人達へ

 再び日常へ戻っていくケイタ。そして優璃。ラストは、この二人と、そしてケイタの気持ちを受信したセブンで終幕と相成った。
 伊達や宗田。桐原達の世代では、セブン達のような新たな種族を受け入れることは不可能だった。そして、まだ子どもであるケイタには、彼らを守る力は無かった。
 しかし、ケイタが大人になったら。インターネットや携帯電話がより当たり前のものとなったケイタ達の子どもの世代では、また何か変わるかも知れない。その時こそ、本当の意味でフォンブレイバー達が受け入れられるかも知れない。
 そんな時代こそ「明日未来」であり、その期待が、「来るべき時代の大人達へ」と言うサブタイトルであるのだろう。
 悲しい結末であった故に、最後の希望が光る。秀逸なラストシーンだった。

総評

 今、自分の目の前のあるパソコンが、セブンとサードとつながっているかも知れない。そんな風に思わせられた傑作でした。
 インターネットや携帯電話と言った各種メディアと、人工知能。SFにはお約束の異種間交流が、こんな形に昇華されるとは夢にも思わなった。
 安易なハッピーエンドに終わらなかったのも印象的で、まだまだ、人間の幼年期は終わりそうもないが、いつか訪れる幼年期の終わりの、大人達のために捧げる事の出来る、まさに妥協無いドラマだった。
 スタッフ、キャストの皆様、今更ながらお疲れ様でした!

そして、NEXTへ

ケータイ捜査官7』は、しかしまだまだ続く! 続く『NEXT』も、しっかりチェックしていきたい。