朱川湊人『ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント』第4話「怪獣使いの遺産(後編)」(『ジャーロ』2008.AUTMN)

ストーリー

 メイツ星人射殺事件の聞き取り調査をミライと共に命じられたカナタ。
 だがその調査の最中、メイツ星人ビオが目の前に現れ、カナタは発砲してしまう。

第一感想

 真「怪獣使いの遺産」完結!
 本編ではかなりストレスがたまった一作となっていたが、前・中・後編とたっぷり三回に分けたおかげでストレスの無いどころか、本当に「怪獣使いの遺産」で伝えたかった事。描きたかったものが十分描写されていて大満足!
 以下感想。

箱入りウルトラマン・ヒビノミライ

 天然なミライだが、それはGUYSクルー全員でそうなるように仕組んでいるキライがある事が判明。
 バイクの二人乗りを「二ケツ」と言うが、いざミライに「ニケツって何だい?」とか聞かれると、そんな「ガラの悪い言葉を使って欲しくない」と思ってしまうカナタ。
 そりゃ「ケツ二人分」だとか、ミライに教えるのは何と言うかはばかられる(笑)。
 そんなわけで、「そういう言葉は覚えなくていいです」と言う事になるのだった。

たった一人の二人

 地球相手に賠償を求めてきたメイツ星人ビオ。実は彼の賠償はまったくのブラフで、実際には彼一人の行動だった。メイツ星側も無断で観測員を地球に送りこんだ負い目があり、この問題はすでに黙殺されている、と言うのだ。
 それがビオには許せない。どちらの星の人間にも、地球で死んだ父親の悲劇を忘れさせてなるものか、と今回の行動に踏み切ったのだ。ゾアムルチのネーミングが、憎悪(ゾア)ムルチと言うのも、ビオの内心を如実に表しているだろう。
 その姿はカナタに重なる。カナタも同じように異星人に父を殺され、GUYSに宇宙人殲滅、と言う危険な思想を抱いて入隊してきたからだ。
 そんな二人だが、カナタにあってビオに無いものが、GUYSと触れ合った時間だろう。イコール、メビウスと言う異星人と共存してきた時間とも言える。
 その間に育んだ絆が、カナタをしてビオを「こいつは俺だ」と共感させる事が出来たのだろうと思う。ビオの前で罪を償うため自分を撃とうとしたり、「また会いたい」と思えるようになったのも、カナタの中で異星人との共存の可能性、その第一歩が生まれ始めた結果だ。そしてそんなカナタを、ビオも少しの共感を感じ始める。
 不器用な二人の間に生まれた何か。これこそ、本当に「怪獣使いの遺産」が伝えたかったものでは無かったのか。

小ネタ

 ZATラビットパンダなど、色々小ネタも多数!
 こんな所も読んでいて相変わらず楽しいポイントだった。

次回は

怪獣使いの遺産」も終わったが、次回もまだ続きがあるらしい。オリジナルか、はたまたカナタが出演したアーマードダークネスを新たに書き直すのか? 冬に期待。