アサミ・マート『木造迷宮』

木造迷宮 (リュウコミックス)

木造迷宮 (リュウコミックス)

 世間の片隅で三文小説を書いて暮らすダンナさんと、彼の家で働く可愛くて家事上手な女中・ヤイさんの恋愛未満ほのぼの日常ストーリー。
 以下感想。

あえて言おう、女中さんであると!

メイドさん? 否、日本には女中さんというものがあったのだ!」と、目から鱗が落ちた気分だ。
 グローバリズムだ何だのとその意味も知らず安易に外に目をむけよ、と言う声がとにかく幅を利かせる世の中だが、その前にまず足元を見直さなければならないのではないのか?
 あんなちょっと遠くを見なけりゃいないようなメイドさん? メイドさんのエプロン? はっ! あんなひらひらしたエプロンに実用性など合ってたまるものか!
 柔らかい肢体を包む和装の上から着られた割烹着のつつましい輝きを見よ! あのすっぽりと体を包む色気の無さ! 袖と脇でだぶつく、あの安心感! 割烹着が似合う人に傍にいてほしい――そんな願いを抱かせる郷愁にも似た感情を!
 今こそ新たに、割烹着の! そして女中さんの価値を、改めて見出さなければならなければいけないのではないか!
 今、自分、物凄く頭悪い事言ってると思うけどそこは勘弁な!

マジメに言うと

昭和が臭う新鋭絵師

 とはコミックスの文句だけど、まさに昭和が臭う絵とキャラクター。敵がいるとか激しい戦いだとか、そんなものは別段起こらない日常を描いた話なのだが、ダンナさんとヤイさんとの、照れ屋で想いが伝わっていないようで伝わっている、もどかしいようで安心する、そんなストーリーがお好きな人にはオススメ。
 ……いや、もちろん女中さんやら割烹着やらをマジメに語っていないわけではなく(以下略)。