『ロミオ×ジュリエット』第10幕「泪〜貴方と逢えて〜」

 モンタギュー奇襲は失敗に終わった。ティボルトの手を借りて逃げ延びたジュリエットだったが、自責のあまり放心状態でネオ・ヴェローナを彷徨う。
 ついには倒れた彼女を助けたのは、ロミオの母ポーシアだった。



「ねえロミオ……貴方はどうしてロミオなの……?」



 ついにキター! バルコニーと二人の位置からもしやと思っていたら、ホントにキター! 誰もが知っているこの名台詞と二人が手を取り合って駆け落ちした事で、物語は新しいステージに。



 やはりロミオとジュリエット、互いの感情がどん底状態だったところから、特にロミオが「飛んでみせる!」と言い張ったところに最上のカタルシスがありました。
 特にロミオは、議会でもモンタギューの提案した娘狩り強化に対して、キャピュレット家残党の反乱を赦す事を提案するも満場一致で否決され、マキューシオには情に訴えても意味が無いと自分を嗤われる。
 これはすなわち=自分のジュリエットへの想いは誰からも歓迎されていない事と、むしろ捨ててしまった方がお利口だ、と言われているわけです。
 ただただ無事を祈るだけしかできないロミオ。
 そんなロミオだったからこそ、どんな障害でも飛び越えて、君のためなら名前も捨てると言い放つのだからたまらない。いいぞ、それでこそ男の子だと無駄にエールを送ってしまいました(笑)。



 ジュリエットは、放浪シーンよりむしろポーシアとのシーンが印象に残りました。
 彼女の周囲は男ばかりで、女性はほぼコーディリアのみ。そのコーディリアにも、キャピュレット家の当主となったからには安易に頼れるわけもない。
 そこで無条件でジュリエットを抱きしめてくれる母性の存在は非常に安心感がありました。
 ロミオへの「あなたがしっかりしないでどうするのです!?」と言う叱責も、もっともで、この辺りの硬軟が母親だなぁ、と。



 いかがわしい街にジュリエットを匿い、娼婦や女将に金を積んで情報から隠れ家まで用意するティボルト。この資金は一体どこからくるのでしょうか。
 今までジュリエットの弟説を上げてきましたが、どこか超然とした態度といい、モンタギューへの恨みといい、彼もオフィーリア同様、ネオ・ヴェローナ側の第三勢力なのかもしれません。



 ついに息子のロミオにも知れた十一年前のキャピュレット家暗殺の真実。その当人であるモンタギューは、しかし母親の元へ向かうロミオの態度に、孤独とも失望とも取れる反応を。
 十一年前の反乱も、彼の妻への愛の現れか何かだったのか……。と、ここに来てモンタギューが安易にただの悪人だと言えなくもなってきました。



 次回から、ロミオとジュリエットの愛の生活が始まる……!