椎葉周『アンジェリック・ノワール(1) パラダイス・ロスト』

 読書マラソン3・二十八冊目。
『アルティメット・ファクター』完結から数ヶ月……。待望の新作、ここに登場!
 クールだけど執念深いとすら言える熱さで世界と自分をすり合わせようとする少年。
 ファニーフェイスで子悪魔なまるっきりマルコな美少年。
 どこまでもヲタ。
 どSな天使。
 そして、パパはママ(笑)。
 相変わらずの椎葉節が炸裂する痛快な一冊でした。
 以下無駄にほとばしるパトスを叩きつけるネタバレ感想。
 教師・篠原の点数稼ぎの不登校のクラスメイト・山根への作文製作に対抗し、山根を登校させようと試みる悠介。
 山根は、リアルマネートレードマフィアに取り込まれてしまっていた。しかしその裏では、天使が率いる巨大な組織の影があった。



 椎葉周作品では、これまでも「いじめ」「暴力」「経済」などが大きなファクターとして存在していましたが、今回は主人公が十代のため、それらがより大きな実感として圧し掛かります。


「どうしていじめが無くならないのか」
「いじめられた人間はどう対抗していけばいいのか」


 強くなろうと道場に通い、体を鍛え、しかしいじめられる方が暴力に対抗できるようになるには時間がかかる。
 自分のプライドを傷つけられ、嘲笑され、部屋にひきこもり……。


「世の中弱肉強食で、いじめられてひきこもるようなのは社会の負け犬」


 そんな事を賢しらに口に出して、嗤って来る人間こそが、しかし本当に強い人間だとは限らない。真の必要なのは、心を強く持って自分の規範を貫く事のはず。
 実はそれは人が思うよりもずっと陰険で粘着質な精神が必要とされる行為ですが、それを綺麗事のオブラートで包まない椎葉ワールドは素晴らしいな、と思うのです。



 そして『アルティメット・ファクター』ファン全てに送る、「天使」弥生!
 何と彼女はイモータル! そう、あのシャキーラと同じ種族だー!
 リップサービスかと思いましたが、母艦などの設定などから、もはや確実! 表紙を見た時に似てるなーとは思ってましたが。まさか、と言った気持ち。
 これからの作品展開が楽しみです。