魚住直子『非・バランス』

非・バランス (講談社文庫)

非・バランス (講談社文庫)

 読書マラソン2・六十冊目。
 映画化されたものをローカル番組で観て面白かったので買おうと思ったけど高くて止めたら文庫で出逢った、そんな数奇な一冊(笑)。
 以下感想。
 小学校時代のいじめのトラウマから、「クールに生きていく」「友達はつくらない」というルールを守って生きていた「私」。その前に現れたサラさんという「大人」との出会いによって、変わっていく二人の物語。
 もし自分が高校生ぐらいなら、圧倒的に「私」に肩入れしていたでしょう。つい喋りすぎて孤立してしまった「私」、今のままではあまりいい将来は待っていないだろうという奇妙な見通し。そういう不透明さの中の不信は、大いに共感できるものがあります。
 けど、サラさんはデザインの道を志しながらもその道に進めなかった、夢破れた女性です。その腹いせに、服に針を仕込んで嫌がらせをします。そういう後ろ暗い気持ち、夢への期待が裏切られた気持ちにも、共感できます。
 結局、真正面から問題にぶつかっていくしかないという現実。願いを叶えるのは、いつだって自分自身なんだ、と思わせてくれる一冊です。でもそれって、多分救いじゃないんだよなぁ。