三島由紀夫『命売ります』

命売ります (ちくま文庫)

命売ります (ちくま文庫)

 読書マラソン2・四十九冊目。
 以下感想。
 世の中の下らなさ、低俗さに気がついた羽仁男。必要とも思えない命を売りに出そうと新聞広告に出したところ、その低俗さそのものに追い込まれていく。
 最初はまさに調子よく命を売りに出せていた羽仁男。浮世の義理の重力から抜け出して、あらゆる人間を見下ろす立場にいたはずが、
 後半、ACSのスパイ調査の疑いをかけられ、投げ出した命を狙われる立場になって初めて、命を失いたくない、死にたくないと自覚するようになる。
 誰もが求める高い場所。投げ出してもどうでもいいと思える命だけれども、いざそれが無くなると、初めて分かる重要性。家庭を持って会社に勤めて……。欲しいものはそんな低俗性。
 ページをめくる事にその事実に引きこまれ、泣きたくなるようでした。