司城志朗『恋ゆうれい』

読書マラソン二十八冊目。

恋ゆうれい (講談社文庫)

恋ゆうれい (講談社文庫)

 十年連れ添った妻が交通事故で死亡。悲嘆に暮れる夫のもとに、四十九日の法要の晩、妻が幽霊になって戻ってきた……というのがストーリー。
 最初裏の紹介文を読んだ時「ギャグっぽいセカチュー?」と思ってました。読みすすめているうちに夫のもとに幽霊となって戻ってきた妻が、キッチンで焼きそば食べていて、唇の端に青のりがついていた時には「あぁ、これはギャグか」とタカをくくってました。すみません。間違ってました。これは物凄い濃いミステリーで、ホラーでした。
 以下激しくネタバレ
 妻が幽霊になって現れたのに夫はちょっと怯えるんですが、実は浮気してました。それからその相手に妻の存在(幽霊としての)を否定され、少しずつ妻が幽霊とあっている姿は自分の妄想ではないのかと疑い始めます。夫の、浮気相手の身の周りで起きる事故。妻の関与を疑う夫。妻の幽霊は罪を感じて消えてしまい、そして浮気相手は死亡。警察に疑われ、妻が幽霊としてあらわれた事を相談していた知り合いにもその存在を否定され、少しずつ追い詰められていく夫……。


 この追い詰められっぷりが、読んでいて非常に苦しいです。妄想(想像)と現実を区別するべき自分の感覚が信じられなくなる夫の苦しみがまた……。
 そして最後に、そのすべてが幽霊となっていた小椋アンによって仕組まれていたラストにはただただ驚くばかり。そして、そのエンディング切ない……。
 読むのに時間はかかりますが、その価値はある一冊でした。