サマセット・モーム『雨・赤毛』

 読書マラソン12冊目。マジレン響鬼も無い日曜日はつまらんのぅ。そんなわけで、読書マラソンです。

雨・赤毛: モーム短篇集(I) (新潮文庫)

雨・赤毛: モーム短篇集(I) (新潮文庫)

 大学の講義の都合で強制読書と相成りました。正直言って、こんな機会が無いと読まない作者の作品なんですが……。以下盛大にネタバレ。
 短編3編を収録した文庫。「世界短編至上の傑作」と凄い事言ってるだけあって、凄まじく面白いです。というか、あまりの完成度に読んでて色んな意味でむかつきます。
 

  • 『雨』

 宣教師が1人の娼婦の教化に乗り出す話。大学でもこの作品について試験でレポートを書かなきゃいけないみたいなんですが、これについて建設的なレポートをどう書けばいいのかさっぱり分かりません。作品の中で一番人の逆鱗に触れてくれちゃったやつです。
 まずキリスト教が教化していく過程がむっとくる。他の地域の文化を否定して勝手にルールを作って、守らなきゃ罰金、それでも駄目なら協会から追放して、商売や漁獲にありつけないようにしたり。お前は何様だと声高に問いたい。「キリスト教は世界一ィィィィッ!!」とか宣教師が大声で叫んでる所を反射的に思い出します。シュトロハイムかよ!
 一番ぞっとするのが、最後の最後のオチ。宣教師は娼婦が怯えるほどに教化で娼婦を追い込んだ挙句、何とその身体を……。最後の娼婦の、
「男、男がなんだ。豚だ! 汚らわしい豚! みんな同じ穴の狢だよ、お前さんたちは、豚! 豚!」に、この宣教師に対して凄まじいくらい幻滅してしまった。
 文庫の裏の紹介に「重く間断なく降り続く雨が彼の理性をかき乱してしまう……。」とか書いてるんですが、それは雨のせいじゃなくてお前自身の問題だろうよ! 雨のせいにしてるんじゃねぇよ宣教師! と思いっきりツッコミを入れてしまったし。
 ほんとこれ、どうレポートを書けばよいのか……。講師もバリバリのキリスト教至上主義者っぽいから、下手な事書いたら単位くれなさそうだし……。どうすりゃいいんだ……orz

 最後の最後でひっくり返された一作。中盤辺りは普通に美しい恋愛話だったんですよ……。えぇ、途中までは。ここでどんでん返しする必要ないじゃんと、読み終わった後プチ鬱に。いや、確かに伏線とか張ってあったんですが、それでもこれはひどいだろうと。恋愛に臆病になったらどうしてくれると。

  • 『ホノルル』 

 1人の女を巡る男達の戦い……とでも言えばいいのか。実は勝負になってないんですが、男Aが女を奪うために女の男に呪いをかけるという話。普通に呪われて死までのカウントダウンが始まってたりしてるのが怖い。そしてどうして呪われたのかと言えば、全面的に男が悪いんですよ。男が色んな事を気楽に構えすぎてるから呪われたりするんですが。結局男は何も変わらず気楽に構えて生活してるんですがね。