三田誠『レンタルマギカ ありし日の魔法使い』
- 作者: 三田誠,pako
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2008/04/01
- メディア: 文庫
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しかし主人公は、ツンツンしている十代の猫屋敷さん(喜)!
以下ネタバレ感想。
ストーリー
「魔法を使わない魔法使い」伊庭司が設立したアストラル。そこへオズワルドから、布留部市の霊脈の調査と言う依頼が舞い込む。だがそこで待ちうけていたのは、『夢』を叶える為活動していた、オピオンの魔法使い達だった。
司に反目していた猫屋敷は、オピオンの魔法使いの一人にオピオンに勧誘される。
過去編キャラクター
現在の時間軸では名前だけしか登場しなかったキャラクターも、当然登場する過去編エピソード。しかし、穂波の祖母・ヘイゼルだけはやはり登場しない。
伊庭司
いっちゃんの父。若き猫屋敷さんをからかうためにパソコンを購入する剛の人。妖精眼は無いが、「社長命令だ!」で部下を操るのは父子二代に渡って変わらない。
いっちゃん同様、魔法使いの世界をただの世界の人間の理屈で突き進む哀しきドン・キホーテ。
隻蓮さん
まだ成長中の隻蓮さん。今回はそれもあってか、不覚を取る。実質、アストラルのナンバー2。
ユーダイクス
変わり身の術を披露(ぇー)。
猫屋敷さん
過去編の主人公。若く未熟でツンツンケンケンしていた猫屋敷さんが、アストラル=貸し出し魔法使いと言う仕事にちょっとだけ希望の光を見出していく。
司にはからかわれ、穂波にもからかわれ、年上からも年下からもけちょんけちょんに愛される男。
柏原代介
影崎さんが名前を変え、アストラル社員として働いている頃の名前。彼に個性が無いと表現されるのは、もはやその域を通り越した仙人であるから……らしい。
猫屋敷さんが影崎さんを嫌いなのは、この頃にコンビを組む事が多く、そこで散々精神的に弱いところ見せて指摘されたと言う過去があったからのようだ。
また現在、影崎さんがシガリロを吸っているのは、伊庭司の影響か。
穂波
五〜六歳の穂波。今のように影も無く、明るく快活だった頃の穂波。
余談ながら、
あたしだって、いっちゃんのことしょっちゅういじめちゃうけど、嫌いじゃないもん。おばあちゃんが言うには、そういうのって好きの裏返しなんだって
には壮絶に吹いたwwwww
いっちゃん、愛されてるナァ。
オズワルド
アディリシアの父にして、ある意味、自分が破滅する要因を作った男。大貴族にしてゲーティアの首領としての、まさに「王」としての傲慢さと同時にアディリシアを愛する父親としての両方の姿を見る事が出来る。この後、彼が辿る結末を考えると複雑だ。
アディリシア
やはり五〜六歳の頃のアディリシア。アストラル、穂波との接触は一切無い。しかし、オズワルドにも黙って今回の事件を追う内に、あわやの所で妖精境へと迷い込みそうになる。
こんな時代からいっちゃんとの御縁があったようで……。うわぁ、運命だ(笑)。
若き猫屋敷さんの懊悩
今回のエピソードは、まさにこれがメインとなる。
「どうしても殺したい人間がいる」。
その一人を殺すために、辻斬り紛いのフェーデを繰り返し、アストラルへと入社した猫屋敷さん。普通の社会とは相容れないはずの魔法使いが、まるで普通の人間のように社会に馴染んでいる。そんなアストラルに嫌悪を抱き、一時はオピオン入りさえ考えた。
しかし自分達の事しか考えない魔法使いの中に、自分達のように他人のために魔法を使える魔法使いがいたら――。そんな希望を抱き、アストラルに居続ける事を決めた猫屋敷さん。
司がいなくなり、ユーダイクスが、隻蓮さんが、ヘイゼルがいなくなっても、一人になってまでアストラルを支え続けた猫屋敷さんの根っこがここにあった。
オピオン
いつき、ひいてはアストラルとオピオンとの因縁はここから続いていた。
オピオンが掲げる目標は、第一巻のオズワルド同様、「魔法使いが魔法になる事」だった。これまでその夢が「魔法使いのみで構成された社会」と思っていたが、自分の事しか考えない魔法使いが、そんな事を考えるはずも無く。結局、清清しいまでに自己利益の追求だった。
現在とのリンク
まず、オピオン達は、布留部市に眠る竜を無理矢理孵化させて、自分達の体内に取り込める形に変質させようとした。
これがいっちゃんの妖精眼が異常なものに変化した原因である。また、この時オピオンの魔法使いが作ったものが、オズワルドが使用した赤い種だった。これは竜の一部であるので、一種帰巣本能的なものが働いて暴走したオズワルドは布留部市にやって来た。
これらの事をいっちゃん達が知った事で、過去と現在がつながった。
これからはよりオピオンとの対決が激しくなりそうだが、やはり鍵を握るのはヘイゼルと行方不明になっている司だろう。この二人が再登場する時、物語は大きく動き出しそうだ。