吉村夜『黄昏の刻(5) 黄金の旅路』

 読書マラソン3・二十一冊目。
『黄昏の刻』最終巻。
 普通に出版されていたのを認知していなかったために読むのが遅れたと言う、吉村夜ファンとしては最低の事をしてしまった……orz
 反省深く、以下感想。
 アメリカ・ロシア・中国の三大国による稀人排斥を名目とした大虐殺が始まり、稀人達は秘密裏に建造していた潜水艦で逃亡。
 稀人と言う種を残すために、容赦なく凄惨とも言える選別を行い、恋人・友人とも分かれ、そして何の彩りも無く死亡していく。
 その姿をヤマタノオロチに変えた赤目との死闘の中でも仲間達は次々と死んでいく。
 死闘の果て、神となった夕姫は何度も銀嶺との理想の人生を過ごした結果、魔名も無く稀人もいない、兄妹と言う中で一度しかない人生を生きていく事を選択する。


 まさに吉村夜イズムが全開した一冊、と感じました。
 ありとあらゆる幸福も愛も、無限の苦痛と闇に隣り合わせ。どんな作品の中でも少なからず明言されているテーマを凝縮した作品でした。
 小難しい軍事知識や展開はポーンと放り投げるような軽妙さと、小説が描く人間と人間の関係をえぐったような重さを供えたドラマのバランスが見事の一言。
 

 それにしても、後書きが作品すべてを物語っているってある意味素晴らしい。案外、こういうのって書けないもんです。


 ところで、銀嶺と夕姫が兄妹で恋愛関係にあるのは、神話の兄妹始祖神話がモチーフにあるんですね。今更気がつきました。

 それでは、次回作を楽しみにしてお待ちしています!