ウィル・マッカーシイ『コラプシウム』

コラプシウム (ハヤカワ文庫SF)

コラプシウム (ハヤカワ文庫SF)

 読書マラソン2・五十三冊目。
 完全に衝動買いしちゃった一冊。理由は、まぁ……察してください(笑)。
 以下感想。
 マイクロ・ブラックホールをグリッド状に配置安定させた超光速伝道物質コラプシウムの開発により、物質転送装置ファックス、記憶・人格までも完全に模写した自分自身の分身を作り出す技術はもとより不老不死まで手に入れた太陽系女王国。このコラプシウムを応用したリング・コラプシターを巡っておこるトラブルに、コラプシウム開発者であるブルーノが挑む、というストーリー。
 まぁ「挑む」と言っても、このブルーノはいわゆる天才に位置するキャラクターなので、ほとんどドラマなく解決策を出して解決してしまうのですが。
 これが一気にドラスティックな展開になっていくのは中盤からで、リング・コラプシターのトラブルが実は破壊工作だった、と発覚してからです。
 ちなみに表紙の少女ヴィヴィアンは、ストーリーにはあまり絡んできません。ただ、その境遇そのものが、ラストのネタバレの先駆けとなるキャラクターの立ち位置になってます。
「何よりSF!」の一言に尽きる作品。
 科学知識や物理法則がページを埋め尽くす迫力が圧巻。さらに意外と泣かせどころも心得ている一冊。千円もしたけど、その価値がある小説でした。