クリス・ウッディング『ポイズン(上)(下)』
読書マラソン2・三十&三十一冊目。
- 作者: クリス・ウッディング,渡辺庸子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2005/11/29
- メディア: 単行本
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- 作者: クリス・ウッディング,渡辺庸子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2005/11/29
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妖精王に連れ去られた妹を取り戻すため、主人公ポイズンが旅立つと言うありがちな物語。
しかしありがちなのは表面だけで、実はそうじゃないのがこの作品の凄いところ。
世界は<導師>という物語を紡ぐある種の絶対者に支配され、ポイズンはおろか他の誰もが物語の登場人物に過ぎない。それぞれの役割を放棄すると、世界自体が消失してしまう、自由意志の存在しない残酷な世界。しかも絶対者である<導師>ですらも、また別の<導師>に書かれた物語に登場するだけの人物かも知れない……。
と言う、ファンタジーものでありながらメタ構造を備えた一筋縄ではいかないものになってます。
上巻は旅立ちから様々な試練〜というように比較的ファンタジーやってますが、下巻では世界の真実を知る事から、妖精王らの権力闘争を利用しての告発闘争に移行していきます。
キャラクターは章ごとにばんばん死んでいき、予想できないミステリーの様相を見せてます。
この作品の一番の魅力は、主人公ポイズン。ポイズン=毒というインパクトある少女で、その名前も継母にあてつけるためだけに成人の儀式で自分でそう名乗ったのがはじまり。
冷笑的で頑固で、世界に対して憎悪を抱いているという、普通のファンタジーの主人公ではありえない性格です。しかし反面、辛い現実に目をつぶって思考停止している虚偽が許せない、まっすぐな性格です。復讐、意趣返し何か当然の権利とばかりに行動する“悪い子”の魅力があふれてます。
ナウシカはテトに噛まれても「痛くない」ですませてくれますが、ポイズンの場合踏み潰してしまいそうです(笑)。
でも、訳者後書きで比較として登場しているハリー・ポッターだってそんなに性格いいとは思えませんが(笑)。奴は陰険だよ?(コラ)
前に読んだ『魔物を狩る少年』でも思った事ですが、設定や風景のパースなんかに、どこかジャパニメーションっぽさを感じます。やはり作者の趣味か。
この作者の作品はもっと読みたいので、どんどん翻訳されて欲しいなぁ。