マイケル・マーシャル・スミス『みんな行ってしまう』
読書マラソン五十五冊目。ほんといい加減ペースを上げていかんと……。
- 作者: マイケル・マーシャル・スミス,嶋田洋一
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2005/09/22
- メディア: 文庫
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SFやホラーを足して二で割ったような独特の雰囲気がある短編連作十二編を収録。短編だから読みやすいだろうと思っていたんですが、意外や意外、読みにくいと言うか、一作一作にパンチが効いています。以下気になった作品を箇条書き。
- 「みんな行ってしまう」
いくら今仲良く遊んでいても、いずれ皆ばらばらの道を行き、もう故郷には帰ってこない。でも、代わりの誰かがやってくる。ずっとずっと。
当たり前の寂しい事が哀しい。
- 「地獄はみずから大きくなった」
風邪をも体の中から治療するためのナノマシンを開発していた男二人女一人の三人の開発者達のうち、女が死んでしまった事で、その方向性を変えたナノマシン開発。
女の霊を見るためのナノマシンを開発した途端、見えた霊は皆、この世に生きている人間にとって忌まわしい人間ばかりだった。しかもナノマシンはまたたくまに世界中にばらまかれ、人類は滅びていくという救いようのない話。
よく霊と話して成仏させる……。なんて話がありますが、こっちの霊は犯罪者やら殺してしまった人間や、見えてもどうしようもないものばかり。もしも見える霊がこんなのばかりなら、そりゃぁ祈る意味もなくなりますな。
- 「ダイエット地獄」
発端はジーンズだった。どんどんサイズが大きくなるジーンズ。危機感を覚えて、ビールを断ち、運動を開始するももちろん続くわけがない。ならどうするか。そうだ、タイムマシンを作って肉体を若返らせよう! な話。
とりあえず馬鹿かお前はと。まじめにやってる世の中のダイエッターの人達に謝れと叫びたい一作。ただまぁ、その気持ちはよぉぉく分かります。
俺だって痩せよう痩せようと思いつつも缶チューハイ飲むは夜食食べるは間食するはで……。
なんて哀しい記憶を思い出させてくれるこの一作のオチは、タイムマシンで若返らせるととんでもない姿になるというもの。
でも一番のツッコミどころは、タイムマシンがった二ヶ月で、しかも四百八十ドルしかかかってない事ですかね。
- 「家主」
自分の家のはずだが、その家に知らない男がくつろいでいる。男は自分を家主であると主張して、まったく帰ろうとしない。職場では新しくきた社員が自分のポジションを奪って行って、上司もそれを容認している。
本当に自分のものというのはあるのか。改めて考えさせらます。
- 「ワンダー・ランドの脅威」
巨大化したテーマパークに飲み込まれたような街。子供を利用し、老人相手にした強盗やら保険金殺人を請け負っている男が、テーマパークのぬいぐるみに散々にやられる話。想像するとえらいシュールで、しかも最後にはぬいぐるみにひったてられていきます。
一体どんな拷問を受けるのか……考えるだけでもガクブルです。