千葉智宏『機動戦士ガンダム00P(上)(下)』

『電ホ』に掲載されて、総集編ムックとしても出版された『00』公式外伝『機動戦士ガンダム00P』が上下巻の小説形式で出版。
 メインである模型、メカ設定が削られた事と書き下ろしによって、小説としての密度が高くなっているのが特徴。
 掲載時には本編との都合で語られなかった、イノベイドやイノベイターイオリア計画の詳細等の壁が取り払われた事で、設定なんかもすっきり登場。
 第二世代、及び第三世代ガンダム開発史、と言った連載/ムック版とは違い、こちらでメインにもってこられているのは、むしろマイスタースカウトの件について。人間をガンダムマイスターにしたいリボンズと、イノベイドをガンダムマイスターにしたいビサイド・ペインとの暗闘が描かれている。
 人類統一の過程で、憎まれ役として消える定めを背負ったソレスタルビーイング(の実働部隊であるガンダムチーム)。
 愚かな人間のために、何で自分が消えなきゃならんのだ、と人間を代役に立てようとするリボンズ
 これに対し、愚かな人間にソレスタルビーイングの根幹たるガンダムを任せられるわけが無い、と言う意見のビサイド・ペイン。
 外伝で起きた悲劇的な事件、プルトーネの惨劇や組織内での内紛等も、すべてこのガンダムマイスターに対する意見の相違に端を発していた。しかし、どうしてこうもリボンズ達の遺伝子パターンはこうも問題を起こすタイプなのか……。
 その上、どこまで行ってもメインはガンダムでは無く太陽炉、である所がまた泣ける。五期の太陽炉は、コロニー・ソレスタルビーイングのエンジンになる予定だったらしいよ?
 ところでイノベイドの元になった遺伝子を提供しているのは、イオリアが集めた組織のメンバーだと言う事だが、そうならば、リボンズ達のオリジナルは一体どんな性格をしていたのやら……。