『DARKER THAN BLACK -黒の契約者-』最終話「死神の見る夢は、黒より暗い暗闇か?」

 ついに大黒斑も最終段階へと移行した。最後に生き残るのは人間か。契約者か。最後の審判が、今、下されようとしていた。




『ダーカー』、ついに完結!
 どうでもいい事ですが、正式なクレジットは「最終話」じゃなくて「第二十五話」。便宜上「最終話」にしましたが、よりこの作品にふさわしいのは「二十五話」だと思ったので、一応。
 



 黒は人間であり、本当の契約者ではない。彼の能力は彼の中に移動(融合?)した白の能力の一端に過ぎない。
 彼が人間の身で「黒の死神」と恐れられるまでに人を殺していた理由は、「契約者になってしまった妹を受け入れるため」。




『ダーカー』最終話で黒が、そして未咲が選んだのは「第三の道」。
 人間が死んで契約者が生き残るのでもない。
 契約者が死んで人間が生き残るのでもない。
 人間と契約者が共に生きる第三の道
 二つの「ゲート」からはじまった、何千年後か。何万年後か。誰も見た事のない未来へ「みんな」を連れて行くための第一歩。
 契約者が、ドール達が少しずつ変わりだしたように。




 その一歩を、契約者達はすでに歩み始めていた。
 時間を移動できるアンバーの存在を一つのきっかけにして、盲目的な合理的判断と言う名の現状から。自分達で情報を持ち寄り、結束し、「何故」と疑問を発した。
 そしてその結果、契約者達は組織の目的を知り、自分達の身を守るために結束し、南米の天国門を破壊した。
 さらに東京でE.P.Rとして契約者に人間と同様の権利を求める声明を発表した。契約者が人間と同じ立場に立つために。
 E.P.R=イブニング・プリム・ローズ=ツキミソウマツヨイグサ)の花言葉が「自由な心」であると言うのも、それを象徴していた組織名だった。




 人間側でそうしたのは、黒と未咲、そして黄だった。
 黒は非契約者でありながら、妹を受け入れるために泣きながら人を殺していった。
 未咲は黒が李舜生であると気がついていて、彼を信じ「東京エクスプロージョン」を起こさないと主張し続けた。
 黄は、黒を力強く叱咤した。人間でありながら契約者として生きる「どっちつかず」な彼に「両方取れ」と。契約者である志保子を失い、また黒達のために命を落とした黄。チームの親父である黄だからこそ、このセリフの重みが生きる。
 人らしく、契約者らしく生きろ、と。




 そうして、黒の手を取るのが、あのニック!
 同じ星でつながった、人間と契約者が手を取り合う。
 その周りには、いつもと何も変わらない姿の猫。ノーベンバー11、ハヴォック、黒と関わった契約者達。
 そして、妹もアンバーもいない黒を必要とし、手をのばした銀。
 彼らの背中を押されるように、黒は「黒の死神」でも「李舜生」としてでもない一人の人間として、サターンリングを破壊する。
 その力は、人と契約者の二つの生き方を持つ黒の、本当の能力は、変化させる力。電撃=電磁波によって物体を量子的に変質させ、人間を契約者にすら変異させる可能性を持つ力。
 まさに変化の力そのものであり、彼の存在そのものと言える力。




 そして未咲も、契約者以上に合理的に社会の秩序を守るためにエリック西島を殺して事態の隠滅を図る宝来を弾劾する。その切り札となったのが、身体検査で奪われたテープレコーダー。おそらく、アンバーが時間操作の際に彼女に持たせたもの。
 彼のワイヤー? を活かした装備を持たせ、公安としての活動を続ける未咲。人間と契約者の軋轢を知る最前線と言える場所で生きる彼女が、これから選ぶ道は。
 第一話から彼女のモノローグで始まった物語は、やはり彼女のモノローグで終わる事になる。
 人を契約者に変化させる能力を持つ契約者として国家を超えた存在である組織に追われる事になり、闇に身を潜める事になった黒に代わり、表で生きていく彼女は、黒と再会する事はあるのだろうか。




 黒と未咲の二人をつないだアンバーが口にしていた「黒のために〜」と言う理由は、本当は自分が黒を手放したくなかったから。彼女が他の契約者の誰よりも感情豊かだったのは、何度も時間を遡って生きてきたという事があるのかも知れない。
 しかし、幼いアンバーの表情の儚さが凄いのこれが。作画レベル高いなオイ!
 時間を越えて、ある意味女神のように二人をつないだ彼女が、間違いなく変化の最初の一歩。




 地獄門を囲む壁は壊れ、日常は戻ってきた。
 契約者が世に知られる事が確実になった世界。探偵事務所の連中はいつも通りなれど、いなくなったヘルナンデスのように確実に変化している日常。
 それは、黒と未咲が共に歩んでいる同じ道なのか。
 黒と白が一つとなって人間と契約者の垣根を取り除く力を得たように、二人が表裏一体となって世界を変化させうる力になる。
 人間と契約者は同じもの。唯一の違いと言える精神性すら、状況においては変わらない。
 ならば何を持って変化させうるか、変化させるべきなのか。
 ラストが銀の観測霊でシメたのは、その変化を「観測」すると言う意味合いがあったのかもしれない。





コードギアス 反逆のルルーシュ』の後釜として始まった『ダーカー』。お祭り騒ぎだった前者とうって変わって静かで暗い作品だったけれど、ぞわりと心に残る名作でした。
 スタッフ・キャストの皆様、お疲れ様でした! DVDの特別編も楽しみにしています!