最終夜「黒い寓話〜愛しきものは全て去りゆく」
軍クーデター部隊の前に現れたヴォグート達ブレイン・ギア。彼らは多脚戦車を投入し、本格的に武力介入を開始する。
一方、大伴タワーでは完全体へと変態を遂げた神代と神崎芳生の遺志を継いだ隼人=骸骨男との死闘が始まっていた。
高いクオリティと予想外でありながらも期待を裏切らない脚本……。ほんともう、脱力するしかない。しばらく、この感動の余韻にどっぷりと浸っていたい。
関東圏に遅れる事約三ヶ月。最終夜は、第十三夜「黒い寓話」とエピローグ「愛しきものは全て去りゆく」の二部構成。
最終夜すべてを通して語れる事は「正義と悪」。そして「人としての生き方」。
公式BLOGの企画書に、
正義のヒーローは、もういない。
正義そのものが、もはや見えない。
正義と悪とが まだら模様を描く
そんな時代が来て、ずいぶん経った
と描かれていた通り、『スカルマン』には正義のヒーローなんていなかった。
「正義」はクーデター軍の司令官、GROと化した警官、神代、そして骸骨男の「力」だけ。
正しさの象徴としての正義を断じる無口な「悪」だけが最終的に勝利したものの、その行動はかつて芳生が見た南亜戦争の悲劇を再現してしまった。
また自分の親友の想い人であった実の妹をこの手で殺した。殺すしかなかったという哀しみを一身に背負う結果になっただけだった。
そして、真の悪は世界を真綿で首を絞める様にじわじわと悪しき方向へ歪めていく……。
骸骨男が語ったように、ただただその真意を語る事無く。
まさか、隼人がブレイン・ギアの総帥として改造手術を受けてスカール様になろうとはッ!!!
しかも声優さんは若本規夫さんッ! ラストのこれだけのための起用……スタッフの本気っぷりにはもはや惚れこむのみ。
骸骨男の仮面の本来の用途が、進化した肉体の制御=過ぎた力を抑えるいわば理性の象徴としてのアイテムであり、事実ガ號計画を潰そうとしていたにも関わらず、黒い幻影の総帥として世界を争いの渦へと巻き込んでいく存在に……。
多脚戦車の強力な戦闘能力、ヴォグートのサイボーグとしての力を含めて、その技術力がうかがえ、『サイボーグ009』における「人間一人一人が悪の細胞であり正義の細胞である」と言う言葉が重く圧し掛かる。
ならば「黒い幻影」とは単にブラックゴーストの喩えではなく、
「力こそ正義」「悪をもって悪を裁く」
と言うそれぞれの考えそのものを指す言葉なのかもしれない。
それは幻のようなものであり、真実とは「正義の細胞の一欠片として悪と戦い続ける」と言う島村ジョーの言葉と対になっている。
まぁ、石ノ森作品に依存しすぎている、と言う批判は仕方ないですけどね……。
一方、重いテーゼを背負ったメインキャラクターに対して、魅力的なサブキャラクター達は力強く生き続けている。
世界の行方を憂いていた立木は、改造された隼人によって殺されてしまった。まさかの立木の死であるが、刺客の類ではなく隼人が直接来たのがある種の救いでもあるような気もする。
麗奈は生き残り、新條となかなかいいコンビを組んでいる。二人もまた、「子ども達を守る」と言う小さな正義を守るために戦った。
『仮面ライダー』しかり、『サイボーグ009』しかり、やはり正義はか弱い蟷螂の斧こそが石ノ森作品だよなぁっ! と興奮。
ヒロインの霧子。彼女は子どもを産んでいた。多分、タイミング的に隼人との子どもなんだろうけど……。
その顔(というか髪型?)がジョーに似ているのは、多分確信犯なんだろうなぁ(笑)。
是非次回は、このスタッフで『サイボーグ009』のリメイクに挑んでもらいたいですwww
一クールという短い期間を、高いクオリティとストーリー展開で楽しませてくれた『スカルマン』。
『仮面ライダー』よりの作品化と思いや、『サイボーグ009』のパラレル前史作品になろうとは思いもよりませんでした。骸骨男とヴォグートの加速装置演出もたまらかったなぁー!
同じ系譜の『009-1』とのアイディアの使い方との相違なんかも、一ファンとして楽しめました。でも、ラスボス役が森川智之さんだったのは変わりないのが面白いところ。
正式に完結していない『スカルマン』。
だからこそ、どんな形でリメイクしても最終的に「エピローグにしてプロローグ」という形で終わる事が絶対条件で、そこに視聴者をどんな形で裏切るか、と言うのが重要だったのではないかと勝手に妄想。
そういう意味では、個人的には満点でした。
スタッフ・キャストの皆様、遅ればせながらお疲れ様でした!